しゅはまはるみ(47)が4日、東京・池袋シネマロサで行われた映画「アリスの住人」初日舞台あいさつで、児童虐待など難しいテーマを扱った作品への出演オファーを即決したのは、澤佳一郎監督の丁寧な作品作りへの信頼だったと強調した。

「アリスの住人」は、事情があって家庭医で生活できない子どもたちを、里親や児童養護施設職員など経験豊かな人が養育者となって家庭に迎え入れて養育する、里親制度を発展させて08年から施行した制度「ファミリーホーム」と児童虐待がテーマ。澤監督が自身の家庭内で起きていた父と祖父の暴力、出演した伴優香(28)の実体験などを盛り込み原案、脚本、編集まで務めた。

しゅはまは劇中で、ファミリーホームの“ママ”加茂朋恵を演じた。主演の樫本琳花(20)が演じた、幼少期に父から性的虐待を受け「不思議の国のアリス症候群」に悩まされる港つぐみや、伴が演じた単身赴任から帰ってきて暴力をふるった揚げ句、体調を崩した父に心を開けないでいる白戸多恵を、実の母のように受け止め、慈しんで育てる役どころだ。

壇上のトークの中で、しゅはまは出演オファーを受けた際の思いを聞かれ「プロット(あらすじ)を拝見していたし、台本を読んで真剣に取り組まなきゃと…。澤さんとお話ししたし、私の話も聞いてもらった」と振り返った。澤監督と2人で、公民館で話し合ったという。その上で「事件を題材にして脚本を書かれたい方、いらっしゃると思うんですけど…当事者の気持ちを大事にしたいし、そうでない作品には出るのが怖い。澤さんの思いが、ドッシリとあった。台本が出来る前でしたけど、お話聞かせて頂いた上で出演させてくださいと」と熱っぽく語った。

しゅはまにとって、池袋シネマロサは忘れることの出来ない“聖地”だ。自ら出演し、製作費300万円のインディーズ映画ながら、興行収入31億円超と日本映画史に残るヒットを記録した、上田慎一郎監督の18年「カメラを止めるな!」(『カメ止め』)を公開初日の同年6月23日から19年3月7日まで258日連続で上映し続けたのが、同劇場だ。舞台あいさつも何度となく立ち、喜びの涙も流してきた大切な場所だけに「今日は本当に皆さん、ありがとうございます。すごい満席…うれしい」と感慨深げに語った。

「アリスの住人」では「カメ止め」でテレビ局社員曽我大臣を演じた曽我真臣(38)と、お団子頭のAD栗原綾奈を演じた合田純奈(27)が助監督を務めている。合田は座敷童役で女優として出演もしている。合田は「カメ止め」出演後、朝日新聞で記者になったが、俳優と制作の両面で映像制作に携わりたいと20年1月で同社を退社。曽我がYouTubeで展開する映画番組「シネマチラリズム」の制作、出演を続ける傍ら舞台に出演。そして「アリスの住人」で「カメ止め」以来、役2年ぶりの映画出演を果たしている。

この日の初日舞台あいさつには曽我と合田も駆けつけ、曽我は助監督として舞台あいさつのもようを撮影した。「カメ止め」の聖地で、自らが製作に携わった映画の初日を迎えた2人は、目にうっすら涙を浮かべ、感無量の面持ちだった。