乃木坂46生田絵梨花(24)が、大みそかをもってグループから卒業する。多才な魅力を兼ね備えた人気メンバー。特に「レ・ミゼラブル」「モーツァルト!」など多数の本格ミュージカルでも活躍する歌唱力はグループ随一だった。ライブや楽曲でも長年、大事なパートを任されてきた。

だが、取材を重ねる中で、意外にも「声にはある種のコンプレックスがあったんですよ」と明かしていた。「『ぐるぐるカーテン』とか聴いても分かりますけど、ピーンと張っていて、高くて、ちょっと浅い声なんです。だからもうちょっと幅や深みを出したいとずっと思っていたんです」と振り返った。

普段のアイドルとしての歌と「ミュージカル歌唱」とはまた別物。「歌い方というか、言葉を届けるつもりで歌えたらいいなってずっと思っていました。しっかり歌えればいいって問題じゃないというか…」。共演者の中には百戦錬磨のベテランも多い。「やればやるほど自信を失うんですよ」というほどの周囲のレベルも高いミュージカルの世界に飛び込み、ボイストレーニングなど単純なスキルアップだけではなく、歌声との向き合い方でも試行錯誤していた。

転機の1つとなったのは18年のミュージカル「モーツァルト!」で演じたモーツァルトの悪妻、コンスタンツェ役だったという。「それまでのイメージとは真逆の役だったので、結構無理して低めに歌ったりしたんです」。ちょうど前後で乃木坂46のライブがあり「『ここじゃないどこか』の録音を聴いたりした時、案外昔のほうがこの曲はいい気がするな、と思って。何でもかんでも『歌います!』と感じて歌うのが正解とは限らないんだ、というのを感じました」と明かした。

普段の歌と「ミュージカル歌唱」について意識するようになり、「違いに気づいてからは、だいぶ開拓はされてきたとは思います。ちゃんと工夫しながら、少しずつ探れているのかなあ、とは思います」と説明した。

卒業ライブは15日に終わったが、大みそかの「NHK紅白歌合戦」はじめ、乃木坂46としての歌声を届ける機会はまだ残っている。「今は昔と同じような歌い方はできない部分もあるんですけど、自分なりに、それぞれの曲でこういう感情がこの声になりました、っというような届け方をしていきたいです」と話した。

11年8月の加入以来、乃木坂46の「歌声」を最前線で引っ張ってきた。「どういう形になるかは分からないですけど、乃木坂を離れても音楽活動をしたいと思っています」とソロでの音楽活動にも意欲を示している。単純な歌のうまさだけではない。決して慢心せず努力も試行錯誤も重ねて来たからこそ、先頭を走り続けることができたのかもしれない。 【横山慧】