結成4年でコント日本一決定戦「キングオブコント2018」を制してから、もうすぐ4年がたつ。お笑い第七世代の一翼を担う実力派として名をはせるコント師、ハナコ。15日から東京・下北沢の本多劇場で単独ライブ「タロウ6」がスタートする。好感度が高く、幅広い世代から愛される存在になったトリオが、笑いをまじえつつ、現在の思いを話した。【取材・佐藤成】

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初の単独ライブを行うハナコ。左から菊田竜大、秋山寛貴、岡部大(撮影・中島郁夫)
初の単独ライブを行うハナコ。左から菊田竜大、秋山寛貴、岡部大(撮影・中島郁夫)

★再び短尺ネタに

菊田竜大(34)の出番が極端に少ないことが特徴的な、コントのような取材だった。秋山寛貴(30)岡部大(32)の2人がしゃべり、ポイントで菊田が出てくる。2人と違う視点のコメントで笑いを誘った。

秋山「全部自分たちだけで構成・演出してやれる場ってほかにないので、単独ライブはすごい特別ですね。自分たちのせいでウケますし、自分たちのせいですべるし」。

岡部「単独は本当に自分たちのやりたい形で、そのままをみていただける。単純にこんなに連続でコントすることないので楽しいです」。

菊田「単独は一番緊張します。やっぱ結構ネタ数あるので。ネタは一番緊張します。慣れないですね~」。


ライブでは全部新ネタ。どこがウケるか見当がつかないのは怖さでもあり、楽しみでもある。5分尺のネタで勝負する「キングオブコント」を18年9月に制してからは10分を超えるような長尺コントを作っていたが、昨今のネタ番組増加に合わせて再び短尺のネタを作るようになった。

秋山「普段の単独ライブでは中では7、8本だったけど、10本目安で行こうかなと思っているんです」。

岡部「長い尺は単独の醍醐味(だいごみ)でもあるんですけど、改めて5分くらいの尺をやろうかなと」。

菊田「ぼくは短い方が好きですね。1本そんなに見ていられないというか。視聴者としていろいろ見たいので(笑い)」。


「タロウ6」はハナコ史上初となる、5日6公演で開催する。このスケジュールで単独ライブをすることへの意気込みは?

秋山「本当にその時代や体験、気持ちがネタに垣間見えることがあるので、そういうのを感じて楽しんでもらったらうれしい」。

岡部「(会場の)本多劇場が3年ぶり。パワーアップしている姿をみせたい」。

菊田「ちょっとコントやりすぎると熱出す体質なんですよ。お笑いとほどよく距離感保っておかないと知恵熱? コント熱? みたいなのが出るので、「がんばって乗り切る」で(笑い)」。


★岡部危機感抱く

3人は所属事務所が運営する養成所「ワタナベコメディスクール」の同期だが、秋山・菊田のコンビに、別コンビを解散して1人フラフラしていた岡部が加入した形だ。

岡部「一緒にやりたかった同期が他でコンビ組んでいて、解散しそうだったんですけど、もちこたえて。ちょうど菊田がご飯誘ってくれて(自分のような)脂っこいやつが1人いても良いかなって思って、ぼくからその時『入れて』っていいました」。

菊田「いやだと断りました。はっきり」。

岡部「めっちゃ雰囲気悪かったです。新宿の居酒屋でそれまで盛り上がっていて、1時間くらいで切り出したら、すぐお会計になりました」。


店を出て駅まで歩く途中、岡部は「このままでは加入の話がなしになってしまう」と危機感を抱き、秋山に電話した。

岡部「秋山は『あーいいよいいよやろう』って。『え、どっち2人? 3人?』って(笑い)」。

秋山「ぼくは瞬時に(岡部との)コンビの方が売れると思ったんですよね(笑い)」。

菊田「あぶなかったーほんとあぶねー」。


新たに組んだことで、トリオは事務所の所属もなくなり、フリーとして再出発。その後事務所主催のライブで評価されて、再び所属を勝ち取った。

菊田「これが売れる芸人の道筋か、これだって思いました。これ売れるぞと」。


秋山、岡部が行うネタ作りに菊田は参加しないことがたびたび注目される。菊田はどう思っているのか。

菊田「やっぱり、なんか仕事中とかの合間に2人がネタの話をしている時、ぼく無意識じゃないですけど、2人から離れようとしている。「なんか悪いな」っていう気持ちはあるかもしれない。ぼくはその時、他の芸人とかとしゃべっているので。今まであんまり思わなかったですけどね。交ざりたい気持ちはやっぱりないですね。ぼくが入ったところで、力にならないなっていう。邪魔してもあれですし。けんかになったら一番最悪」。

岡部「コンビでネタ書いていない方みたいな人たちって今までもいくらでもいたのに、菊田だけフィーチャーしてもらえる。なんもないやつの代表格みたいな。ありがたいですよね」。

★動機は三者三様

芸人を志したのは三者三様だ。

秋山「昔からお笑い好きでした。シャイで、おとなしい性格だったので、そんな売れるイメージはつかないんですけど、のぞきたいっていう好奇心ですね」。

岡部「高校の同級生とコンビを組んで、高校の文化祭とかで教室借りて自分たちだけでライブをしていました。大学上がった時に誘ってもらって、(所属)ワタナベ(エンターテインメント)主催の大学生お笑い大会がきっかけです」。

菊田「小中高大と爆笑王でした。なんだったら、世界で一番面白いと思っていたんですよ。一番でかかったのは、大学生の時に友達に『やっぱ菊ちゃん面白い』って言われたんですよ。『やっぱ』付くってすごくないですか。『菊ちゃん面白いな』だったら始めていない。ぼくの面白いを1回面白いと思って再認識しているんですよね。これは相当面白いぞって思って始めました」。


コント界の頂点に立って売れっ子に。イラストなど芸術家肌の秋山、ファッション好きの菊田、俳優業もこなす岡部とそれぞれの道でも活躍する。

秋山「キングオブコントの前後で全然状況が違います。いろんな畑の人に知ってもらえて、コント見てもらえたらうれしい。1カ所に固まっていないのは良いことだと思いますね」。

岡部「1人で行く現場でもこの前のコント見たよって言ってもらえること多いし、見てもらえるからこそ、呼んでもらえる」。

菊田「吉本(興業)みたいに劇場がないので、広げていかないとお金稼げなくなっちゃう。すごい人生楽しいです。良い人生だなってつくづく思っています」。


それぞれ目標を聞いた。

秋山「Mr.ビーン好きなので、最終的には国籍を選ばず笑えるものが1個作れたら、うれしいです」。

岡部「東京03さんみたいな、みんなからコント面白いよねって認めてもらえるようになりたい。あとはダチョウ倶楽部さんみたいなおじさんになっても皆から愛される存在になりたい」。

菊田「バナナマンさんとかさまぁ~ずさんみたいになりたいです。あの2組の仕事って全部楽しそう。仕事でハワイに行けるのはすごく憧れる。いつかハナコで番組でハワイ行けたら」。

岡部「ハナコに海のイメージないよ」。

菊田「これからつくかも。そういうネタよろしく」。

秋山「じゃあ菊田にアロハシャツとか着てもらって…(笑い)」。

菊田「なんでおれだけ」!


▼▼フジテレビ系「新しいカギ」で共演する所属事務所の後輩芸人丸山礼(24)▼▼

菊田さんは「そこに存在する人」を演じるのがこの世で一番上手で人間らしい人間でありピュアゆえそれがコントの中にもにじみ出ていて、秋山さんは収録の空き時間ができたらいつもiPad(アイパッド)にネタをしたためたり、お得意のイラストを描いていたり…ぼーっとしているところは見たことがないほどいつもなにかをクリエートしている印象で、その秋山さんがしたためたものをひょいっとのぞいてひょいっと理解してアイデアのキャッチボールをして完成したものを演じきる最大の理解者が岡部さん。適材適所で自然派かつ親戚のお兄ちゃんのような親近感のある憧れの先輩です。


◆ハナコ

秋山寛貴(あきやま・ひろき)1991年(平3)9月20日、岡山県生まれ。

岡部大(おかべ・だい)1989年(平元)5月30日、秋田県生まれ。

菊田竜大(きくた・たつひろ)1987年(昭62)6月12日、千葉県生まれ。

18年に「ワタナベお笑いNo.1決定戦」「第9回お笑いハーベスト大賞」「キングオブコント2018」優勝。フジテレビ系バラエティー「新しいカギ」(金曜午後8時)など出演。


◆「タロウ6」

ハナコの第6回単独公演。コントライブで、ハナコ史上初となる5日間6公演で開催(15~19日)。所属事務所が主催する笑いの祭典「ワタナベお笑いWEEK」(14~20日)の一環で東京・下北沢を盛り上げる。