デビュー50周年を迎えた時に取材した。久々のロングインタビュー。西郷さんは立ち上がって「歌手で俳優の西郷輝彦です」とちゃめっ気たっぷりに、あいさつしてくれた。「僕の人生は岐路ばっかりだったけど、仕事の本籍を問われれば、やはり歌手が最初です」と話してくれた。

西郷輝彦さん三女の今川宇宙「酸素マスク越しに手の甲にキス」亡くなる前日の様子明かす>>

水原弘、三波春夫、春日八郎、三橋美智也らが活躍していた時代に、デビューした。「僕は(当時の)最初のアイドルでした」と懐かしんだ。キャンペーンでレコード店を訪れると、人が来すぎて屋根を伝わって脱走したこともあった。

一方で、歌謡界の荒波で浮き沈みも経験した。ある日、東北に公演に行った時「御三家で来ると思った。どうして1人で来るの」と言われた。「(御三家の人気に)甘えていては大変なことになる」と気付いた。転機を問うと、デビュー曲の「君だけを」「星のフラメンコ」そして「どてらい男」の3つを上げた。「歌手ではマネジャーらを引き連れてワイワイ行ったのですが、俳優は自分でロケ先への電車を手配したり、全部自分でやらなければならなくなった。でも、とても楽しかった」と笑った。

「今の日本は団塊の世代が引っ張ってきた。今の若い人は生きて行くにも大変な時代。だから、もう少し頑張らねばと思う」と言った。その約束を守って欲しかった。【笹森文彦】