宝塚歌劇団雪組の若手スター縣千(あがた・せん)が12日、兵庫・宝塚大劇場で、雪組伝統の和物「夢介千両みやげ」新人公演に主演。最後の新人公演で通算3度目のセンターに立った。

「桃太郎侍」などで知られる山手樹一郎の小説を舞台化した作品。道楽修行に出る庄屋の息子にふんし「縣千としても、夢介としても楽しめました」と満面笑みでファンに感謝した。

今年は年明けすぐ、1月に宝塚バウホール主演も経験した。

「バウホール(主演)も経験し、今までと違ったことと言えば、舞台上でも、どうすればお客様に楽しんでもらえるかを、考えられるようになりました」

舞台から客席の反応を見る余裕も生まれていた。さらに、新人最上級生としての自覚も強まった。

「長の期(最上級生)として、場面ひとつでも、お稽古場から、皆がどうすればもっと良くなるのか-。それを考え、1人1人に言うようにしてきました。お芝居は皆で作るもの。自分が言うことによって、悪くなるんじゃないかって不安もありましたが、流れをくみとって、言いました」

悩み、本役のトップ彩風咲奈に相談。彩風からは「もし、言ってよくなかったら、それは縣のせいだから。でも、それも勉強」と言われたといい、縣自身が「長の期」としての自覚を持てたという。

15年入団の101期生。目鼻立ちのはっきりしたルックス、172センチ長身で男役として恵まれたスタイルで、期待も高い。今回は本公演でも主要キャストの遊び人「金の字」を演じており「新人公演だから得られる尊い経験を仲間とかみしめ、1日限りのこの公演、全力で生きて、楽しめました」と胸を張った。

ヒロインは夢介が道中出会う女スリのお銀。押しかけ女房の難役に挑んだのは、コロナ禍で20年に5カ月遅れで入団した106期生の華純沙那(かすみ・さな)。3年目に入ったばかりで初ヒロインを得た。

冒頭、緊張した様子も見受けられたが、じょじょにほぐれ「途中から今までで一番楽しく、自分の気持ちでお芝居ができました。こんな大きな劇場で、強いライトを浴びたのは初めてで、でも、お銀の(キャラが持つ)強さが助けてくれました」。

トップ娘役朝月希和からは「好きに楽しんで」と送り出されたといい「所作、セリフの言い方、テンポまでご指導くださった」と感謝していた。

また、本公演では朝美絢が好演する伊勢谷の道楽息子、総太郎にも、同じく3年目に入ったばかりの華世京(かせ・きょう)が抜てきされた。

東京宝塚劇場での新人公演は5月19日。