尾上右近(29)が13日、都内で、「團菊祭五月大歌舞伎」(同2~27日、東京・歌舞伎座)の第3部「弁天娘女男白浪」の取材会に出席した。

同演目は音羽屋の家の芸。主人公弁天小僧菊之助は3年前の自主公演で演じたが、本興行では初。右近は、取材陣を前に「こりゃてえへんだ、と思っております。気持ちよく、楽しく、いさぎよく、まっすぐ、真摯(しんし)に熱く熱く、つとめたい」と語った。

團菊祭は、9代目市川團十郎と5代目尾上菊五郎をたたえる吉例興行。5代目菊五郎は高祖父にあたり、弁天小僧の初演者でもある。オファーを受けた時のことを「(電話を受け)ベッドの上で体育座りをして、『團菊祭で弁天…』と言いながら泣いていました」と振り返る。

自主公演の時は歌舞伎の師である尾上菊五郎(79)に教えを請うた。「『歌舞伎のにおいがしないとなあ』と一言おっしゃった。自分なりに歌舞伎をやってきた密度を信じることが、歌舞伎のにおいにつながると思っています」と受け止めている。

娘にふんして呉服屋で悪事を働こうとする弁天小僧菊之助。たくらみが露見した後、「知らざあ言って聞かせやしょう」の名ぜりふがある。右近は「いろんな言い方があると思いますが、自分の言葉として、心から言いたい」とした。

感情の爆発を大事にしてきたことが、大役につながってきた。「職人として日々鍛錬し、淡々とした日常の中、いちいち感動したり、いちいち泣きそうになったり、職人としてはやぼに見える感情を大事にしてきました。それが届いたのかもしれない。自分が放てる空気は歌舞伎座でもどこでも変わらない。思いっきり、思うようにやり、伝統に心から、真摯に向き合いたい」。