愛称ひふみんで知られる加藤一二三・九段が今秋、82歳にしてオンラインを使った将棋教室に初挑戦する。親子参加型で将棋初心者の小学生とその保護者が対象。将棋指導と子育てのアドバイスを組み合わせた異色の試みで「とても楽しみです」と話している。

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77歳で現役引退後も、将棋界のレジェンドは精力的に幅広く活動している。今年1月に「バチカンと日本100年プロジェクト」アンバサダーに就任し、国際文化交流に貢献。同5月にはテレビ東京系ドラマ「歯無しのグルメ」に出演し、お笑いコンビ空気階段の鈴木もぐら(35)との共演が話題になった。そして今回、コロナ禍の時代に対応する形でオンライン将棋教室を初めて開くことを決意した。「オンラインを使うことに不安はありません。ぜひ多くの子どもたちに参加して欲しい」と話している。

強いこだわりを注ぎ込む場となる。「ひふみんのオンライン将棋教室」は「詰め将棋」(全3回)が高いウエートを占める。実は10歳でプロ棋士を目指すと決意した時、詰め将棋を熱心に研究した。初めて手にした本で学んだ詰みの形は「今でも覚えているぐらい感動的でした」という。棋力を磨き、14歳7カ月で当時史上最年少の中学生プロ棋士となった(記録は16年に藤井聡太が更新)。詰め将棋は、藤井聡太5冠や羽生善治九段、谷川浩司九段、里見香奈女流5冠らも重視したことで知られる。

ひふみんは「詰め将棋は寄せ方(攻める側)が最も良い手で攻め、守る側の玉方(ぎょくかた)が最も良い手で粘ろうとします。将棋は相手玉を詰ませて勝ち負けを競いますから、この最も良い手を考えることこそが上達への道なのです」と説く。今回の教室では「親子で話し合っても構いませんが、お子さまが選んだ指し手はなるべく尊重してあげてください」という。

子どもと同席して受講する保護者に毎回、ひふみん流の子育てアドバイスも送る。厳しい勝負の世界に身を置きながら愛妻とともに一男三女を育てた良きパパの一面を持つ。将棋で学んだ哲学も踏まえ、子育ての気づきにつながるトークの時間も設ける。

オンラインでの実施は全国どこからでも参加できる手軽さが魅力。「神武以来の天才」と称されたレジェンドの指導に触れる絶好の機会と言えそうだ。9月23日、10月1日、8日に開催。中井広恵女流六段も参加する。

◆加藤一二三(かとう・ひふみ)1940年(昭15)1月1日、福岡県生まれ。14歳でプロ棋士に。58年に史上最速でプロ棋士最高峰のA級八段に昇段。82年に名人位に。タイトル獲得は名人1期、棋王2期など。公式戦対局数2505局は歴代1位。藤井聡太5冠のプロデビュー戦で対局。指導対局や講演などの経験も豊富。