岡田将生(33)と清原果耶(20)が、台湾アカデミー賞(金馬奨)最多5冠の映画「1秒先の彼女」(チェン・ユーシュン監督)の、日本版リメークに主演することが18日、分かった。原作は、人よりワンテンポ早い彼女と遅い彼の、消えた1日をめぐるラブストーリーだが、日本版は舞台を京都に移して男女のキャラクター設定を反転。タイトルは「1秒先の彼」(山下敦弘監督、23年夏公開)に決まった。

岡田は、何をするにもワンテンポが早く、イケメンなのに残念な郵便局員ハジメを演じる。「ハジメくん、1秒、人より早いんです。ちょっと口悪く、抜けていて、とてもかわいらしい役。純粋な部分をいかに丁寧に演じるかが肝でした」と役作りと撮影を振り返った。

山下敦弘監督(46)とは、07年の映画「天然コケッコー」以来16年ぶりのタッグとなる。岡田は「いまだに、あの時の撮影は鮮明に覚えてます。あれから16年ぶりに監督と、ご一緒できる事、かみしめました。山下監督と共にこの映画を一緒に楽しみながらも、初心忘るべからず、新人の気持ちで現場にいました」と喜びを口にした。その上で「16、17歳の時には出来なかった、監督からの指示を理解することが出来るようになり、時がたち、一俳優としてまた一緒に映画の現場に立ててることは、感慨深いところがありました」と自らの成長も感じ取ったようだ。

清原は、ワンテンポ遅いながら、ハジメのことをひそかに思い、郵便局に繰り返し手紙を出しに行くレイカを演じる。「原作を見た時、とても愛らしく切ない2人のすれ違いに心を動かされました。ポップだけれどノスタルジーな世界観をどう取り込めるのか、監督やキャストの皆さんと、たくさん言葉を交わしながら撮影に臨めれば良いなと思い現場に向かいました」と振り返った。山下監督作品への出演は初で「今回初めてご一緒させていただいたのですが、作品の空気感を大切にしながら柔らかい雰囲気で現場にいらっしゃる印象があります」と印象を語った。

岡田と清原の共演は、兄妹を演じた19年のNHK連続テレビ小説「なつぞら」以来2度目で、ラブストーリーの相手方を演じるのは初めてだ。岡田は「清原さんとは2度目の共演ですが、お芝居や映画が好きだという姿勢がすごく伝わってくる方で、信頼しあって一緒にやれたと思います」と共演を振り返った。清原も「岡田さんとは、数年ぶりにお会い出来たので、また一緒に現場を作れることが純粋にうれしかったです」と岡田との共演を喜んだ。

男女のキャラクター設定を、大胆に反転させた理由について、山下監督は「キャストは、ある日『男女を反転させる』というアイデアが飛び出したことで、自然と“岡田将生”と“清原果耶”が頭に浮かびました。日本でリメークする意義につながると信じています」と語った。その上で「良い俳優なのはもちろん、相変わらず良いヤツだったのがホントうれしかった。脚本が岡田将生の魅力を最大限に引き出しているので皆様、楽しみに待っていてください」と、岡田の人間性の素晴らしさをたたえた。

さらに岡田が、監督と脚本家として初めてタッグを組んだ宮藤官九郎氏(52)との、関係性の構築にも力になったと指摘。岡田は、宮藤氏が脚本を手掛けた13年の映画「謝罪の王様」と16年4月期の日本テレビ系ドラマ「ゆとりですがなにか」に出演しており「脚本の宮藤さんとは、俺より岡田くんの方が経験があったので正直、現場では助けてもらってばかり」と感謝した。

初タッグの清原については「清原さんの魅力は、とにかく真っすぐなところ。“レイカ”は、どこかフワッとしたキャラクターなので、真っすぐで芯のある清原さんにとっては難しかったかもしれません」と難しい役どころに挑戦してもらったと説明。その上で「でも、最終的には脚本をはみ出した、清原さんにしか描けない“レイカ”になりました」と唯一無二の演技を見せたと絶賛した。

宮藤氏は今回、既存の映画の、リメーク作の脚本を初めて手掛けた。男女のキャラクターの設定を反転させたことについて「配役で煮詰まり『男女の役を入れ替えるというのはどうでしょう』と提案された時、自分でもなぜだか分からないのですが『ヒロインが岡田将生くんなら、それもアリですね』と答えました」と、岡田自身が持つキャラクターが、決意した1つのフックになったと明かした。さらに「岡田くんには不思議な“ヒロイン感”があると思ったのと、郵便局の窓口に岡田くんが不満げな顔で座っている様が容易に想像できたからです」と、原作で台湾女優リー・ペイユーが演じた郵便局員ヤン・シャオチーのイメージとも通じるものだったと説明した。

その上で「『で、本当のヒロインは清原果耶さんに当たろうかと』おお! その手があったか! 清原さんなら、この珍奇なファンタジーに観客を自然に誘導してくれそう」と言及。清原が演じる役を、原作でシャオチーをひそかに思う、リウ・グァンティンが演じたバスの運転手ウー・グアタイに当たる役どころに落とし込む気持ちになったと語った。そして「生き急ぐ岡田将生とモタモタする清原果耶。1秒先の彼なのか1秒前の彼女なのか。とにかく楽しく書けそうだ」と振り返った。

主人公が、すてきな相手とデートの約束をした1日を失ったこと、その理由や何があったかをたどっていく中で、自分を本当に思ってくれた人の存在を知っていくなど、作品の肝の部分は踏襲する。ただ、清原が演じるレイカに当たる原作の男性はバス運転手だが、職業は変わる。宮藤氏は「今思えば、台湾版のキャスティングが完璧すぎて、当たり前になぞっても新しいものは生まれないし、忠実なリメークを作ってもしょうがないし、男女反転という強引な改変で一気に世界が開けた気がします。台湾とは似ても似つかないはずの京都の風景も、とても良い効果を生んでいると思います。楽しみです」と語った。

岡田は、宮藤氏の脚本について「やっぱり宮藤さんの脚本は面白く、オリジナルの良さは残しながら宮藤さんらしさ全開で、撮影が始まる前から楽しみでいっぱいでした」と絶賛。清原も「宮藤さんの魔法がかかったような脚本と、にらめっこしながら、精いっぱいレイカを生きました。ぜひお楽しみに」と手応えを口にした。

山下監督にとっては、18年「ハード・コア」以来5年ぶりの長編映画となる。「京都市のイメージは『せっかちなのにのんびり』。『1秒先の彼』は時間もテーマのひとつなので、その時間感覚も映したいと思いました。また、日本海側でも撮影出来たので、京都のいろいろな表情が撮れたんじゃないかと思っています」と、原作の良い部分を踏襲しつつ、プラスアルファを込めた意義を強調した。