講談師で人間国宝の神田松鯉(80)、神田伯山(39)が28日、東京・歌舞伎座で「特撰講談会」を行った。「芸術祭十月大歌舞伎」(10月4日初日)で、松鯉が得意とする講談の名作「荒川十太夫」が歌舞伎化されることを記念したもの。主演の尾上松緑(47)が特別ゲストとして登壇、鼎談(ていだん)を行った。

講談師が歌舞伎座に上がるのは97年ぶりという。講談師になる前は歌舞伎役者だった松鯉は「夢のような気持ちです。まさか歌舞伎座でやらせていただけるとは。腹の底からうれしいです」と話した。

この日は松鯉の80歳の誕生日。松緑に「おめでとうございます」と言われ、松鯉は「いつの間にか年を取りますね。一生懸命やるという気持ちだけはいまだに続いています」と応じ、歌舞伎になる「荒川十太夫」を口演した。

伯山も「歌舞伎座に上げさせていただけるのは光栄。幸せな気持ちでいっぱいです」と話し、「安兵衛駆け付け~婿入り」を口演した。

歌舞伎版上演を目前に控え、松緑は「松鯉先生、伯山先生の語る『荒川十太夫』を汚すことなく、心の底に伝わるものを作り上げていければ」と決意を語った。

「荒川十太夫」は、赤穂義士の堀部安兵衛が切腹する際、介錯(かいしゃく)を務めた荒川十太夫を描いた。