大地真央(66)、花總まり(49)がダブル主演する舞台「おかしな二人」(4月8日から、日比谷・シアタークリエ)が3年ぶりに再演される。膨大なせりふの掛け合いが笑いを呼ぶニール・サイモンの名作を、初共演から息ぴったりに立ち上げた2人。無双のコンビネーションの背景には、宝塚歌劇団出身者ならではの「通じ合えるもの」があるようだ。【梅田恵子】
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初演は、新型コロナで世界が激変した20年10月の上演だった。多くの舞台が中止、延期となる中、感染者ゼロで千秋楽を迎えた本作は大きな話題となった。
大地は「おかげさまで休演することなく作品をご覧いただけて、こうして再演できることがうれしいです」。観客側にも制限が多かった当時を振り返りながら「再演の4月は、余計なことを考えなくてもいい日々になっていてほしい。コメディーはお客さまの笑い声があってこそ。絶対面白くなりますので、安心して楽しんでほしい」と話す。
物語は、敏腕プロデューサー、オリーブ(大地)のアパートに、夫に捨てられた専業主婦フローレンス(花總)が転がり込んできた共同生活の顚末(てんまつ)を描く。がさつなキャリアウーマンと、きちょうめんな専業主婦。正反対な性格が巻き起こす騒動と友情のゆくえが、笑いとホロリで描かれていく。
大地 生きてきた過程が全然違うから面白いんでしょうね。アネゴ肌で、ああしろこうしろと見捨てないオリーブと、良妻賢母として生きてきたフローレンスが、お互いをほっとけなくてけんかになる感じ。ダメなところもいっぱいあるけれど、お互い何かを学んで、最終的にみんな自立してかっこいいんです。
それぞれ、役とは共通点があるようだ。
大地 オリーブは仕事は敏腕だけど、家の中はぐちゃぐちゃで、別れた男についつい送金してしまうダメダメなところもある。本音としてはさみしくて、女友達の面々とわいわいゲームして遊ぶ時間が彼女には大切なんですよね。私も似ているところはあるなと(笑い)。完璧主義者なところはあるのに、書類や本とか家にこーんな感じでテキトーに積み上げちゃってるところとか。
花總 私はきちょうめんなところとか、けっこうフローレンスのタイプですね。地方公演などで長く家を空けていると、帰ってからまず拭き掃除して、さらに掃除機をかけて、さらに雑巾がけをして、結果、3重にやっていたりする(笑い)。フローレンスはおたまを振り回したりもしますが、一生懸命で憎めない。かわいいと思います。
ともに宝塚歌劇団出身。初共演だった初演から、「言葉にはできないが、通じるものはある」という。
大地 わりと言いたいことを言えちゃう感じはありますね。年齢こそ違いますが、「同じ釜の飯を食った」という意識は自然にある。私の中では、なんとも言えないえこひいきみたいなものはあったりしますね、やっぱり(笑い)。
花總 私は同じ宝塚という次元ではないですね。大先輩、大上級生の域を超えた存在。あの大地真央さんと一緒にお芝居ができるという喜びと緊張感は今回も変わらないです。
大地 でも最初に私が「何て呼べばいい?」と聞いたら、「花ちゃん」って(笑い)。
花總 いやもう、最初は直視してもいいのだろうかと。1秒以上見れない、みたいな。初演はとにかく必死でした。私は宝塚時代あまりコメディーを経験していないので、向いていないんじゃないかと。
大地 そんなことなかったよ(笑い)。度胸があって、それが良かったの。
花總 本当にお稽古場でたくさんアドバイスをいただき、フローレンスの笑いを引き出していただきました。フローレンスがヘラジカっぽくなる場面も、ヘラジカに見えるように教えていただいて(笑い)。
互いに、再演に自信を見せる。
花總 見る人に共感していただけるものがたくさんある名作。そこに輪をかけて、大地さんの魅力がいっぱいです。私も前回の反省点を踏まえ、より面白いものをお届けしたいです。
大地 せりふが膨大で「またあれを覚えるの?」という感じですが(笑い)、ニール・サイモンの世界を絶妙なテンポと間で楽しんでいただけるように頑張りたい。前回も完成形として自信をもってやりましたが、再演ということでさらに絶対面白くなります!
■音楽学校寮生活経験 共同生活は苦にせず
物語の2人は、180度違う性格ゆえに共同生活にストレスを感じていくが、宝塚音楽学校で寮生活を経験している2人は、共同生活は苦手ではないという。59期の大地と、77期の花總が、それぞれの時代の「すみれ寮」を懐かしそうに振り返った。
大地は「3人部屋なんですけど、生活はそれなりに大丈夫でしたね。私は2段ベッドの上で」。すると、花總が「2段ベッドだったんですか!? 畳に布団3つじゃなくてですか?」とびっくり。大地が「2段ベッドだったの。花ちゃんのは第2でしょ? 第1だもん、私の時代は。劇団も音楽学校も一緒だったのよ」と語ると、花總が「えー、そっか。第2ということは、第1がある!」と感激して聞き入った。
大地は「3人で好き勝手やってましたね。最年少だったので2段ベッドの上。登るのは面倒でしたけど、カーテンもあったし、邪魔されない感じは良かったかな。共同生活はそういうものだと思っていたので」。花總も「この物語のように、突然親友が転がり込んできても、私は多分大丈夫です」。
逆に、「こういう人とは共同生活は無理」というポイントを聞くと、大地は「ネコが嫌いという人とは無理」と笑って即答。「今は4匹。夫もネコ好きなので、まあ幸せにやってます」。花總は「寝たい時に寝させてくれない人はダメですね。早い時は9時前から寝るくらい早寝なので」。
◆舞台「おかしな二人」 米劇作家ニール・サイモン作。ひょんなことから始まった親友同士の共同生活と、正反対の性格が巻き起こす騒動を描く。65年ブロードウェーで上演され、68年映画化。20年、設定の女性バージョンとして、大地真央、花總まりのダブル主演で舞台化し好評を博す。宮地雅子、平田敦子、山崎静代、芋洗坂係長、渡辺大輔の初演メンバーのほか、青木さやかが新キャストで加入。スペシャル・カーテンコールのショーも大きな見どころ。
◆大地真央(だいち・まお)本名・森田真裕美。1956年(昭31)2月5日、兵庫県生まれ。71年、中3で宝塚音楽学校を受験し一発合格で入学。73年宝塚歌劇団入団。新進男役として早くから注目され、82年、月組トップスター。黒木瞳とのコンビで人気を博した。85年退団。女優転身後も舞台、ドラマなど幅広く活躍。文化庁芸術祭大賞、菊田一夫演劇賞など受賞多数。
◆花總まり(はなふさ・まり)1973年(昭48)2月28日、東京都生まれ。日本女子大付属高卒。89年宝塚音楽学校入学。91年宝塚歌劇団入団。94年「風と共に去りぬ」新人公演でスカーレット・オハラを演じ、雪組娘役トップスターに。98年宙組に組替え。トップスター通算12年3カ月は歴代最長記録。06年退団。16年「エリザベート」の演技で菊田一夫演劇賞大賞。