俳優本郷奏多(32)が主演するフジテレビ系深夜ドラマ「クライムファミリー」(全4回)の最終回が2日深夜に放送された。同作は昨年10月からスタートした「火曜ACTION!」枠の全4話で構成された深夜ドラマで、同局が誇るヤングクリエイターたちが月替わりで担当。1日までのTVer再生数は全エピソード累計100万回を突破し、同局深夜番組としても異例の数字をマーク。同枠で最高値をたたき出している。プロデューサーを務めた制作局ドラマ・映画制作センターの江花松樹氏(29)がこのほど、日刊スポーツの取材に応じ、最終回となる第3回はドラマ制作の裏側について語った。【高橋洋平】

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「クライムファミリー」は江花氏による完全オリジナルドラマ。初プロデュース作品で、温めていた構想をついに具現化させた。

「もともと話の骨子は、もう完全に自分の中ではできていました。4話までの細かいところはもちろんできていないんですけど、詐欺師がだまそうと思って家に入ったら、4人とも全員もっとヤバいことをやっている家族で。そこに振り回されながらも家族の再生をしていくんだっていうのは、自分の中でできていた。多分ちゃんとつくったら、一番面白くなるなという感じだったので、それで行こうという感じです」

江花氏の頭の中には2つの構想があったという。それを掛け合わせて、本作が生まれた。

「ざっくり言うと1個は、1つの組織の中にニューカマーが入ってきて、その組織を壊すという話をやりたかったんですよ。組織の中に異物が入るという意味では『女王の教室』(日本テレビ系)とか木村拓哉さんの『教場』(フジテレビ系)シリーズとかもそうですよね。ドラマのフォーマットとして、既存の組織に異物が入ってくるという形が、まず自分の中でやりたいなというのがあって。異物がその組織を変えていくという話は結構王道だと思うので、そういうのはまずやってみたい、というのが1個あって」

もう1つは「家族」をテーマにすることだった。

「それとは全く別に、自分の中で家族をテーマにしたものをやってみたかった。それはウエットなものじゃなく、ホームドラマでもなくて。結構とんがったものをやりたいと思っていたんですよ。家族という柔らかいものがあるから、振りが効いてて変なことできるなというのが、また別の方で考えてて」

影響を受けた作品として、家族をテーマにしている韓国映画「レッドファミリー」や週刊少年ジャンプで現在連載中の漫画「一ノ瀬家の大罪」を挙げた。中でも「家政婦のミタ」(日本テレビ系)に思い入れがあった。

「僕が学生時代に見ていて一番ヒットしていたのは、『家政婦のミタ』なんですよ。『ミタ』はバッチリその構造に合っているというか、異物が家族の中に入っていって、1回破壊するんですけど、その破壊行為によってもう1回家族が結ばれるというか。これをいろいろやりたいってなった時に、さっきの異物が中に入ってきて、その組織を修復していくというか、良くも悪くも変えていくっていうのを混ぜられそうだなと」

主人公の松田郷(まつだ・ごう)の名前にも秘密が隠されていた。

「『家政婦のミタ』に似た要素が入っている映画に『家族ゲーム』があると思うんですけど、(主演の)松田優作さんを思いっきり、エッセンスとしては入れていますね。要は家庭教師として堕落した家族の中に入っていって、破天荒なんだけど、なんかちょっと家族をたたき直していくっていう。だから主人公は『松田』なんです。『郷』っていう名前も、長渕剛さんがやっていた時(家族ゲーム、TBS系ドラマ版)の名前が『剛』なんです。だからもう完全にそこから持ってきてます」

既存のドラマから着想のヒントを得ながらも、オリジナリティーを追求することで、ドラマの内容を端的に表す「ログライン」に独自性を持たすことができた。

「ただ普通にやったら、つまらない。中に入っていった家族が普通だと『家政婦のミタ』と『家族ゲーム』と変わらない。悪いことをしようと思って入っていったら、向こうの方がもっと上でっていう風にしたら、いいかなって。いろいろ自分の頭の中で混ぜて、いけるなっていう2行くらいのログライン、さっき僕が言った『詐欺師がだまそうと思って入ったら、家族の方がもっと悪いやつだった』っていう。2行になるまで自分の頭の中で混ぜていく。そうすると、もう話はどんどん出てくる。家族は崩壊してるから、詐欺師は家族を知らない方がいいな、真逆に置いた方がいいなとか。こういう性格かなとか、結構出てくるという感じです」

過去に見たドラマを明確にカテゴリー分けし、理詰めで今作をつくりあげた。

「今回、(火曜ACTION!枠で)チャンスをもらった形じゃないですか。自分の中で、ちゃんとやってみたっていう感じですね。初めてというか、ちゃんとそういうふうに考えてつくってみようっていう。こういうの面白い、こういうのやりたいっていうのを自分の中でカテゴライズして、どういう構造になっているのか。だいたい構造って一緒だから、さっき言ったみたいに、1人の人が中に入ってきて変えちゃうっていう。だから『家政婦のミタ』とかみたいなのやりたいっていうときに、じゃあ『ミタ』の下敷きになっているのは『家族ゲーム』だから、『家族ゲーム』から色を引っ張ってこようとか『レッドファミリー』の要素も入れたいみたい、とか」

「火曜ACTION!」という枠に感謝した。

「自分の頭の中のことを、僕がやったみたいに具現化できる場所。本当、最初の2行から始まってますからね。それを大人が集まって具現化してくれて、見逃し配信を含めると100万人くらい見てくれてるっていうのは、素晴らしいことだと思うし、それが若手の時からできるっていうのは、非常にありがたい話だなと思います」(おわり)