俳優松下洸平(36)が3日、大阪市内でこまつ座第147回公演「闇に咲く花」(9月6~10日、大阪・新歌舞伎座)の取材会を開いた。

同作は劇作家・井上ひさしの「昭和庶民伝3部作」の第2作として1987年に初演。敗戦後の47年、東京・神田の愛敬稲荷神社に帰還した、戦死したはずの1人息子の記憶を巡る物語。

松下は「木の上の軍隊」「母と暮せば」などこまつ座の出演はあるが、井上作品に携わるのは初めて。「緊張してます」としながらも、「悲しいことを明るく書く劇作家。だからこそ見る人にとっては、どんな資料よりも戦争に向き合おうとする気持ちが芽生えると思う。僕もそうだった」と話した。

演出の栗山民也氏については「言葉数は少ないんですが、ダメ出しの時間が長い。本編よりも長いんじゃないかと思う」と苦笑しながら、「栗山さんは今回も『今の若い俳優は飢えを体現できない』と言ってくると思うので、どこまで体現できるか。勝負ですね」と役者魂を見せつけるつもりだ。

ロシアによるウクライナ侵攻など、戦争が身近な時代になっている。

「井上さんや栗山さんが伝えたいことは戦争の悲惨さ。これだけ長く再演されるのは、伝え続けなければいけない問題を今の日本が抱えているんだと思う。僕たちはあくまで俳優。庶民の声を代表する立場だと思う。政治や社会的なことに大それたことは言えないが、ここに登場する庶民の人の声を借りて、当時のことや今の日本のことを考える小さなきっかけを届けられたら」

松下は野球を通じて記憶を取り戻していく健太郎を演じるが、野球については「僕、球技は全般的にNGなんです」と苦笑い。共演の浅利陽介は球技が得意だといい、「こんなに台本の話をしてますけど、一番やらなきゃいけないのがキャッチボール。稽古場に入ったら、せりふの確認前に浅利君とキャッチボールするのが日課になると思います」。プロ野球では阪神、オリックスの在阪球団が好調をキープしているが、「もし始球式の話が舞い込んできたら?」と聞かれると、「来年でもいいですか? 練習しておくので」と話して、笑わせていた。