20年に米アカデミー賞で、非英語映画で史上初の作品賞、監督賞、脚本賞、国際(長編)映画賞の4冠を獲得した、韓国のポン・ジュノ監督(53)の「パラサイト 半地下の家族」を舞台化する「パラサイト」(5日~7月2日まで東京・THEATER MILANO-Za、同7日~17日まで大阪・新歌舞伎座)合同取材会が4日、東京・THEATER MILANO-Zaで行われた。

質疑応答の中で、世界の映画史に残る名作の舞台化へのプレッシャーはあるか、舞台版ならではの魅力は? と質問が出た。舞台版は、劇中の舞台を現代の韓国・ソウルから、90年代の関西の、堤防の下にあるトタン屋根の集落に移した。物語の流れの大筋は、原作を踏襲している。映画版では、韓国の俳優ソン・ガンホ(56)が演じた事業に失敗し、仕事もないキム・ギテクとその家族を描く。一方、舞台版は、家内手工業の靴作りで生計を立てて暮らす金田文平とその家族が、自らとは対照的な、高台にある豪邸に住む家族に寄生していく。

文平を演じる古田新太(57)は「設定は日本になっていますので、韓国のような半地下の文化もないですし、そのあたりは鄭さん、うまく置き換えて貧富の差を、きれいに出せているんじゃないかな。映画と結末も違いますし、映画をご覧になった人も『うまい!』って、なると思う」と、台本・演出を務める脚本・演出家の鄭義信氏(65)に、全幅の信頼を寄せた。

文平の息子・純平を演じる宮沢氷魚(29)は「この作品を経て、いろいろな家族の形というものがあることに、改めて気付きまして」とかみしめるように口にした。「その中で、どんな家族の形であれ、細やかな幸せを見つけられたら。たくさんの人に希望を与えられる作品になると思うんで。もちろん、映画の中でも表現できていたし、我々も舞台の中で表現できればいいと思う」と抱負を語った。

文平の娘・美姫を演じる伊藤沙莉(29)は「時代設定から結構、いろいろと映画とは違うことも多い。だからこそ、その違いを楽しめるような作品になっていると思いますし」と強調。「設定が日本であることも含めて、特有の貧富の差であったり、捉え方になっていると思う。こことここが一緒、違うと言うよりは大筋、一緒だけれど違ったニュアンス、世界性になっているんじゃないかと思うので、楽しんで欲しい」と見どころを語った。

一方、妻の福子を演じる江口のりこ(42)は「映画のことは、ほとんど気にしていなくて。鄭さんの書いた本、演出で、このメンバーで舞台を作るということしか、ないなと思ってやってきた」と、舞台独自の世界観を作ることに集中、専心してきたと強調した。

高台の豪邸に住む、永井家のベテラン家政婦・安田玉子を演じたキムラ緑子(61)は「映画で見た演出と鄭さんの戯曲は、印象はほとんど変わらず、本当によく舞台に映画をまとめられたなと思う」と鄭氏の手腕を称賛。その上で「役者が変わると世界が全然、変わって見えてくるのは、すごく面白い。それぞれの関係性から生まれてくる…日本で初上映、映画とは全く違う私たちの作品だと、ひしひしと感じる」と、自分たちが作り上げた舞台への愛と、固有の魅力があると胸を張った。

みのすけ(58)は、映画オリジナルキャラクターを演じる。「地下にも家族がいて、僕もいろいろな目に遭って…」と、まず役どころを説明。「そこにも、決して悪い人は1人もいない。なぜ、そうなったのか…何かの掛け違いで、それぞれ家族を守っているのを超えて、惨事になる。悪者がいないのが今回、すごく印象的なテーマ」と語った。

永井家の家長・慎太郎を演じる山内圭哉(51)は「稽古場でお芝居していて、立ちあがって出来るのを見ていて、映画より家族、親子が色濃くなっていて、面白い。やるせなさ感が、また(映画とは)違う。貧富という大きなテーマと家族、親子…すごく面白いなと」と笑みを浮かべた。

娘の繭子を演じる恒松祐里(24)は「映画との違いが、まずはルックスとマインドがギャル」と即答。「映画は現代の女子高生ですけど、今回は90年代。女子高生が元気だった、今より、もっとパワーが強かった時代の女の子なので、そこが映画との大きな違い。そこを、楽しみにしていただけたら」と、映画との違いを明確に示した。

妻の千代子を演じた真木よう子(40)は「原作は、すばらしかったので、多少のプレッシャーはあったんですけれども。あっちは映画で、こっちは舞台。見事に舞台に変えて、日本に置き換えた。ぜひ、生の私たちの芝居を感じていただきたい」と胸を張った。

鄭氏は「映画でやっているような、スペクタクルは見せられないと思うんですけど…人間同士の濃ゆ~い、お互いの思いが錯綜(さくそう)する話になれば良いと思って。実際、そうなっていると思うので」と口にして、初日を前に静かに笑みをたたえた。

◆「パラサイト」 堤防の下にあるトタン屋根の集落。川の水位より低く一日中陽がささず、地上にありながら地下のような土地で金田文平(古田新太)の家族は家内手工業の靴作りで生計を立てて暮らしている。一方対称的な高台にある豪邸では、永井慎太郎(山内圭哉)、妻の千代子(真木よう子)、娘の繭子(恒松祐里)、ひきこもりの息子健太郎がベテラン家政婦の安田玉子(キムラ緑子)とともに暮らしている。文平の息子の純平(宮沢氷魚)は妹の美姫(伊藤沙莉)が偽造した大学の在籍証明を利用し、繭子の家庭教師としてアルバイトを始める。息子の健太郎のアートセラピーの教師として、美姫が、慎太郎の運転手や玉子がクビになるように仕向け、その後釜に、文平と妻の福子(江口のりこ)が…金田家は永井家に、次第に寄生していく。

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