世界的ロックバンドのザ・ビートルズによる“最後の新曲”「ナウ・アンド・ゼン」が11月2日に世界同時発売することが26日、決まった。ポール・マッカートニー(81)が6月に新曲を予告して以来、世界的に高まっていた興奮と期待。ついに全世界に向けてお披露目されることとなった。

新曲「ナウ・アンド・ゼン」の物語は1970年代後半から始まる。故ジョン・レノンが米ニューヨークの自宅でボーカルとピアノによる録音を開始。94年に妻のヨーコ・オノ・レノンが、ジョンの「フリー・アズ・ア・バード」と「リアル・ラヴ」のデモとともに、この音源をポール、故ジョージ・ハリスン、リンゴスター(83)に渡した。

そしてポール、ジョージ、リンゴは新しいパートのレコーディングをし、プロデューサーのジェフ・リンとともに「ナウ・アンド・ゼン」のラフ・ミックスを完成。しかし、当時はジョンのボーカルとピアノを分離してクリアで曇りのないミックスを実現し、曲を仕上げることが技術的な制限により不可能だった。そのため、「ナウ・アンド・ゼン」は将来的に再度作業を行う可能性を残しながらもお蔵入りとなっていた。

再始動のきっかけは21年公開の「ザ・ビートルズ:Get Back」だ。ピーター・ジャクソンが監督を務めたドキュメンタリーは、数々の賞を受賞したフィルムとオーディオの修復技術で視聴者を驚かせた。結果、「ナウ・アンド・ゼン」のデモに対して何かできるではないかという考えが浮上。ピーター・ジャクソンとエミール・ド・ラ・レイ率いるサウンド・チームは、ジョンのオリジナル・ホーム・レコーディングに同じ技術を適用し、ピアノの音から分離することでオリジナルボーカル・パフォーマンスの明瞭さと完全性を保つことに成功した。

そして22年にポールとリンゴが曲を完成させるべく作業を開始した。ジョンのボーカルに加え、ジョージが1995年に録音したエレクトリック・ギターとアコースティック・ギター、リンゴの新しいドラム・パート、ポールのベース、ギター、ピアノが含まれており、ジョンのオリジナルの演奏とマッチさせた。ポールはジョージにインスパイアされたスライド・ギター・ソロを加えた。そして、ポールとリンゴはサビでバッキング・ボーカルも担当した。

ポールは「ジョンの声が、とてもクリアに聞こえる。かなり感動した。僕たち全員が参加した本物のザ・ビートルズのレコーディングだと言える」と出来栄えについて手応えを得た。「2023年にまだビートルズの音楽に取り組んでいて、一般の人々がまだ聴いたことのない新曲をリリースしようとしているなんて、本当にエキサイティングなことさ」とコメント。

リンゴは「彼が部屋に戻ってくることの次に彼に一番近づいた瞬間だったから、僕たち全員にとって、とても感慨深いこと。まるでジョンがそこにいるようだった。斬新だった」と興奮を隠せない様子だ。

ジョンの次男ショーン・オノ・レノンは「父がいなくなって何年もたってから、彼らが一緒に仕事していると聞いて、ものすごく感動しました。この曲は父とポール、ジョージ、リンゴが一緒に作った最後の曲です。この曲はタイム・カプセルのようなもので、運命的なものだと感じています」とコメントした。

また11月10日には「ナウ・アンド・ゼン」に曲数を追加したベスト・アルバム「ザ・ビートルズ1962年~1966年」(通称・赤盤)と「ザ・ビートルズ1967年~1970年」(通称・青盤)の2023エディションVer.が世界同時発売される。