奄美大島の民謡「シマ唄」をルーツに持つ歌手城南海(34)が15周年の節目を迎えている。1月24日発売の記念アルバム「爛漫」(らんまん)には自作曲も収録し、新たな一面をみせた。デビュー当時から抜群の歌唱力と優しい歌声、豊かな表現力は群を抜いている。「歌を通じて世界中に奄美の魅力を伝えたい」と願う歌姫に胸の内を聞いた。【松本久】
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09年1月に「アイツムギ」でデビューして以来、これまでは自然や家族などを描いた優しい作品が多かった。だが「爛漫」では自身の内面に目を向けた曲を多数収録している。
「今までと同じように故郷の海や空を大事にしながらも、これからはもっと自分の中から出てくるものを伝えていきます。すごくワクワクしています」。
昨年にレコード会社をテイチクへ移籍。新チームを作り心機一転し、愛をテーマにした3部作「柔らかな檻」「あなたへ」「愛の名前」を配信リリースした。「爛漫」にはこの3作に加え、自身で作詞作曲した「陽だまりのワルツ」を収録している。
「日常の何でもない景色や大事な人との一瞬の幸せなどは、これまでは書いたことがなかったんです。そこにフィーチャーをして、自然体の言葉で作詞作曲をしたのが『陽だまり-』。そういう世界観は初めての経験だったので、楽曲制作の幅が広がったと感じています」
新たなチャレンジに確かな手応えを感じていた。
「城南海」の名前を世間に知らしめるきっかけになったのが、14年からテレビ東京系「THEカラオケ★バトル」に出演したことだ。奄美民謡独特のコブシ「グイン」を武器に、抜群の歌唱力で毎回高得点をたたき出した。16年には番組初の10回優勝を達成して「絶対女王」の称号を手にした。
「普段の歌い方ではカラオケの高得点は取れないんです。だから奄美のコブシを意識的に入れたり、強く歌ったりしました。出場するからにはファンの皆さんや奄美の人に喜んでもらいたい。すごく大変だったけどやりがいもありました」
名前と顔を売ったことが、デビュー当初からの悩みの1つの解決につながった。それは芸名を「きずき・みなみ」と正しく呼ばれることだ。
「『じょう・なんかい』と呼ばれることが多くて…。携帯電話の検索で『きずきみなみ』と入れたら『城南海』と出ることが目標でした。変換できることに気付いたのは5年くらい前。『きずき』はすごく読みづらい名字なので、それが変換で出たのは目標達成っていう感じでうれしかったです」
その一方で小さな代償もあった。普段とは異なる歌唱でのどを酷使したこともあり、19年にポリープの除去手術を行った。
「やっぱり無理がたまっていたのかなと思います。あの状態で歌い続けるのは難しかったので1度手術をしました。後遺症ですか? それはありません」
毎年開催しているコンサートのタイトルは「ウタアシビ」。奄美の言葉で「歌って遊ぼう」の意味だ。1月に都内で行ったライブでは、歌唱に合わせてファンの指笛が会場に響きわたり、席から立ち上がって踊る人の姿もあった。
「コンサートでは『歌って遊ぶ』という気持ちを忘れずにやりたいです。島にいるように、自由に、歌ったり踊ったりを楽しんでもらいたい」
3月16日には奄美大島で凱旋(がいせん)コンサートを開催する。
「これまで、島の皆さんから力をいただいて歌い続けることができたので、感謝の気持ちを伝えたいです。ファンクラブツアーも開催しているので、島外からもたくさんの方がお越しになる。今の『城南海』を見ていただいて、みんなで一緒に奄美らしく楽しみたいです」
東京生活ではハウスダストなどのアレルギーに悩まされている。だが「島に帰って海につかるとすぐに良くなるんです」。奄美の自然から心と体に大きなパワーをもらっている。
奄美大島は21年に世界自然遺産に登録された。以前は「奄美って沖縄なの?」と聞かれることもあったが、世界が奄美を認めたことで大きく変わったと実感している。
「島に興味を持ってくれる人が増えました。父の泰夫(やすお)が観光ガイドをしていて、海や山、マングローブなどを案内しています。奄美にいらっしゃる際はぜひ父にお声かけください(笑い)」。
歌を通じて奄美の魅力を世界に伝えたい。歌手デビューをしたのはそんな思いからだった。それは故郷への恩返しでもあるという。
今後の目標を聞くと、世界進出だと明かした。
「海外ではシマ唄をすごく喜んでいただけることが多いので、音楽で多くの人とつながりたい。海外で『ウタアシビ』をしたい」
ファンにメッセージを求めると「『爛漫』を聞いていただけたらうれしいです。そして奄美に遊びにきてください」。奄美大島の「観光大使」の肩書も持つ歌姫は、とびっきりの笑顔で歌と故郷をアピールした。
◆城南海(きずき・みなみ)本名同じ。1989年(平元)12月26日、鹿児島・奄美大島生まれ。2歳でピアノを始める。兄の影響で高1からシマ唄を本格的に歌い始め、高2から三味線を習う。09年1月に「アイツムギ」でデビュー。16年には宮本亞門氏演出の「狸御殿」で初のミュージカル出演。20年にはディズニー実写映画「ムーラン」の日本語主題歌「リフレクション」を歌唱して訳詞も手がけた。代表曲に「あさなゆうな」「童神」「兆し」など。



