フジテレビは28日、同局の第三者委員会が認定した元タレント中居正広氏(53)の「性暴力」を巡る一連の問題で、港浩一前社長(73)と大多亮元専務(66)に計50億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したと発表した。同社のアナウンサーだった女性への適切な対応や会社への重大な影響を回避する対策を怠ったとして、フジが6月末までに被った損害額は約453億円と算定。その一部を年利3%の遅延損害金も含め、連帯して支払いを求めた。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は、前経営トップらを訴えるに至った背景などを解説した。
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フジテレビが、バラエティー番組とトレンディードラマで黄金期を築いた2人に対し、巨額の賠償請求に踏み切った。6月5日に港氏と大多氏へ向け、法的責任を追及するために提訴することを発表しており、東京地裁に28日付で、50億円の損害賠償を求めた。フジによると、中居氏の事案は23年6月に発生。港氏と大多氏は報告を受けていたが、重大な人権侵害の可能性があったにもかかわらず、専門的な助言を受けて原因を分析したり、対策チームを設置したりする善管注意義務を怠ったとしている。
昨年12月の週刊誌報道を機に問題が明らかになり、今年1月に社長だった港氏が記者会見。初回となった17日は、参加者を制限するなど閉鎖的な形式が批判を浴びた。日本生命保険やトヨタ自動車などが次々とCMを差し止め、同月末までに300社以上のスポンサーが離反し、広告収入が大幅に減った。同27日にはメディアを制限せず約10時間にわたる会見を行い、その中で社長辞任を発表した。港氏は制作部時代、「とんねるずのみなさんのおかげです」など、数々の人気バラエティー番組を手がけた。
当時フジ専務だった大多氏も関西テレビ(大阪市)社長を4月に辞任。制作部時代の80年代後半から90年代にかけて、「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」「ひとつ屋根の下」など、多くの人気ドラマを世に送り出した名プロデューサーだった。
提訴の理由について、フジは「人権とコンプライアンスを最重要とする企業風土を確かなものにしていくためには、元取締役の責任を追及することが不可欠であると判断した」としている。「50億円」の金額の根拠については、今年6月30日までにフジテレビが被った損害額は453億3503万6707円だとし、「その一部として、被告らに連帯して支払いを求めるもの」と説明。そして「今後損害額が拡大した場合やその他の状況に応じて、請求金額を増額する可能性」があるとした。また、訴状送達翌日から支払い完了まで、年3分(3%)の遅延損害金も併せて請求するとした。
第三者委の調査報告書によると、女性は中居氏から「『業務の延長線上』における性暴力」を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したが、港氏や大多氏は「男女間のトラブル」と即断した。



