映画「ライフ・イズ・ビューティフル・オッケー」(石田忍道監督、10月4日公開)の特別試写会が8日、都内の映画美学校試写室で開かれた。同作は24年に、TAMA映画賞を主催する映画祭TAMA CINEMA FORUMの若手作家のコンペティション、TAMA NEW WAVEグランプリとベスト男優賞の2冠に輝いた。

「ライフ・イズ・ビューティフル・オッケー」は、中華料理店が舞台。亡くなった店主に託され、血縁がないながらも居候して店で料理人として働く牧原和章は、働かずに未完の物語を書き続ける店主の長女・木下美和に、まかないを出し続ける。そんな変わらないと思われた日常が、店を訪れる客、店主の次女、長男によって少しずつ変化していく物語。日本語と日本手話による多言語構成の作品で全シーン、日本語字幕付きという独自の演出手法が話題を呼んでいる。石田忍道監督は、全シーンに日本語字幕を付けた意図について「作品が広く届けばいいなという思いと、字幕という機能だけでなく演出としても面白いかなと思い、付けた」と説明した。

劇中に、ろう者の客が店を訪れ、牧原とスマートフォンに文字を書き込むことでコミュニケーションを取るシーンが出てくる。当該シーンで客の古賀聡美を演じた、ろう俳優のレオは作品を2度、鑑賞したといい、手話通訳を通じて「1人1人が、違った人生を歩み、普遍性のある人間が混じり合っている魅力を感じた」と作品を評した。その上で「日常生活で、やはり聴者、聞こえる皆さんとのコミュニケーションに、私の中には壁があるんですけども、コミュニケーション方法、言語が違っても、牧原さんのように壁がなく、何故か通じ合える人が日常にいる。そこがすごくリンクしたので、演じやすかった」と、ろう者として、実生活に近いことがスクリーンの中に再現されていることを強調した。

牧原を演じた主演の田丸大輔(51)は、フリーとして活動しているが、レオが口にしたような、その人としてあるかのような存在感のある芝居で“次世代のバイプレーヤー”として注目を高めている。劇中では、料理人として朝からキャベツの千切りなどの仕込みをし、肉や野菜をいため、すしを握り、アイスクリームを混ぜてデザートも作るが、出演にあたり料理を猛特訓したと振り返った。「監督からお話をいただいた時に『キャベツの千切りを、できますか?』と言われて、その時には本当にできなかった。クランクイン1、2カ月前に話があって、料理をしなかったんですけど、まな板と包丁を買って、そこから毎日、キャベツの千切りをして頑張ったところではある」と役作りを振り返った。

その上で「頑張ったけれど、指とか切る。難しいんですよね、千切りというのも」と続けた。千切りしたキャベツを食べ続けたことも示唆し「だんだん、慣れてきてキャベツしか食わないと、おなかいっぱい、キャベツを食っても7、8キロ、やせていくことに気付きましたね」と、淡々と語った。

この日の特別試写会後の舞台あいさつでは、トークで語った内容が、タイムリーに字幕でスクリーンに表示される情報保障の、デモンストレーションが行われた。石田監督は「劇場公開後、連日、トークショーを行いますが、そのデモンストレーション。情報保障でいろいろな方に見ていただく工夫をしたい」と語った。【村上幸将】

◆「ライフ・イズ・ビューティフル・オッケー」 牧原和章(田丸大輔)は、木下家が営む中華料理屋で居候をしながら働いていた。長女の美和(田中祐理子)は働きもせず、未完の物語を書き続ける日々。牧原は美和のために賄いのオムライスを作り、美和は食べ…2人の日常は、変わらずこのまま続いていくものだと思われた。ある日の営業中に訪れた客・古賀聡美(レオ)が美和の食べていた賄いのオムライスを「自分も食べたい」と牧原に頼む。その出会いをきっかけに牧原の日常に小さな変化が生まれていく。一方、父の命日で次女優実(斎藤千晃)と弟で長男の竜矢(小松遼太)が久しぶりに店に集まり、仕事もせずパソコンとにらめっこの美和を助けたいと画策するものの‥。