俳優仲代達矢(なかだい・たつや)さん(本名元久=もとひさ)が8日午前0時25分、肺炎のため、都内の病院で死去した。92歳。11日、主宰する無名塾が発表した。演劇と映画の両輪で第一線で活躍し、亡くなる5カ月前まで主演舞台を務めた。生涯現役を貫くとともに、後進の育成にも心血を注いだ役者人生だった。通夜、告別式は、近親者のみで執り行い、お別れ会などは予定していない。

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仲代さん主宰の無名塾は11日、公式サイトで訃報を伝えた。「今年は能登半島地震復興公演『肝っ玉おっ母と子どもたち』で主演を務め切り、次回公演に向けた稽古を始めていたところでした」と記した。関係者によると、10月下旬にけがで都内の病院に入院。その後肺炎を併発し、8日未明に家族に見守られて息を引き取った。

今年5月30日から6月22日まで石川県七尾市の能登演劇堂での「肝っ玉-」が最後の舞台となった。舞台以外では、9月27日に同演劇堂で開館30周年などを記念するトークショーに出席した。関係者によると、普段と変わらず元気な様子で、能登の思い出などを語ったという。来年3月には能登出身の絵師を描いた舞台「等伯-反骨の画聖-」の演出も務める予定だった。

舞台と映像の両方で第一線を走り続けた。働きながら高校を卒業した後、俳優座付養成所に入所。早くから大型新人として注目され、劇団公演の主演を務めた。俳優座在籍中の75年に、妻で劇作家、演出家の故宮崎恭子さん(ペンネーム隆巴=りゅう・ともえ)と俳優養成の私塾「無名塾」を創設、後進の育成に力を入れた。役所広司、若村麻由美、益岡徹、滝藤賢一ら多くの俳優を育て、自らも無名塾公演「マクベス」「リチャード三世」などで主演した。

日本屈指のシェークスピア俳優だっただけでなく、一人芝居「バリモア」や、「肝っ玉-」の女性役など意欲的な挑戦もした。重厚な役柄から洒脱(しゃだつ)なキャラクターまで自在に演じた。映画では黒澤明監督作品の常連で「用心棒」「影武者」などに出演。小林正樹監督「人間の條件」「切腹」も大きな話題となった。ほかNHK大河ドラマ「新・平家物語」で清盛を演じるなど、日本を代表する俳優となった。

たゆまぬ努力が、役者人生を支えた。常に“次へ”の舞台へ向け、発声練習とウオーキングやトレーニングは欠かさなかった。コロナ禍で外出がままならない時は、屋内の階段を何十往復もしたという。

60歳を超えた時、大ファンのプロ野球巨人のエピソードで奮起したことも明かした。「ある選手が監督に『これだけ努力してるのに、なぜ打てないのか』と相談したら、返ってきたのは一言『努力が足りない』だったそうです。私ももっと頑張ればやっていけると思いました」と話した。

晩年は「1本1本が勝負。これが最後かも」と言いつつ、必ず「引退とは申し上げません」と意欲をのぞかせた。唯一無二の存在感と、努力や向上心が共存していた。次の作品も必ず見たいと思わせる大きな役者が旅立ってしまった。

◆仲代達矢(なかだい・たつや)1932年(昭7)12月13日、東京都生まれ。52年に俳優座付養成所に入り、55年に俳優座入団。75年に妻宮崎恭子さんと無名塾を設立。代表作は舞台「リチャード三世」「マクベス」「どん底」など、映画「人間の條件」「切腹」「影武者」「乱」「海辺のリア」、ドラマはNHK大河「新・平家物語」など多数。03年旭日小綬章、07年文化功労者、15年文化勲章。愛称はモヤさん。出演映画がカンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭で最高賞を受賞している。

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