俳優仲代達矢(なかだい・たつや)さん(本名元久=もとひさ)が8日午前0時25分、肺炎のため、都内の病院で死去した。92歳。11日、主宰する無名塾が発表した。演劇と映画の両輪で第一線で活躍し、亡くなる5カ月前まで主演舞台を務めた。生涯現役を貫くとともに、後進の育成にも心血を注いだ役者人生だった。通夜、告別式は、近親者のみで執り行い、お別れ会などは予定していない。
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よく響く声で稽古場の雰囲気を引き締めたと思えば、インタビューとなると「話し下手ですので」と恥ずかしそうな表情を見せた仲代さん。端正な表情のすぐ後には、カメラに向かっておどけた表情をしたりと、取材のたびに驚いたり、楽しい気持ちになった。
印象的な話はいくつもある。細川たかし、三山ひろしら演歌歌手の声量、歌い方にも注目し「すばらしい。生まれ変わったら演歌歌手になりたい」と言ったことや、70歳の時に舞台に立ち続けるため、体に負担の大きいランニングをやめたこと、最前列から天井桟敷まで劇場隅々に響かせる声の使い方、極貧時代に俳優座の試験を受けた時見知らぬ人が試験料を払ってくれたこと。そういった話から、意外な一面、努力を欠かさない姿、仲代さんがいつも謙虚でいる理由を知ることができた。
晩酌が好きで、楽しいお酒だったという。ビール、日本酒、ウイスキー。「このくらいでは酔わないですね。幸せな気分になります」と笑い、記者を驚かせた。仲代さんは誕生日に、稽古場で塾生たちと出演映画を見て過ごすのが恒例だった。昨年は「鬼龍院花子の生涯」を上映した。90歳の誕生日には「切腹」の上映会をしたそうで「出演作の中で最も好きな1本」と話していた。今年の12月の誕生日、どんな作品を見るつもりだったのだろうか。【小林千穂】



