“しゃべり屋”古舘伊知郎(71)が、今月7日の東京・EXシアター六本木から「古舘伊知郎トーキングブルース 2025」をスタートさせた。来年1月からは福岡、名古屋、大阪、横浜と“しゃべりの巡礼”に出る。テーマは「2025(ニセンニジュウゴ)」。今年を2時間、ノンストップでしゃべりまくる。古舘に聞いてみた。【小谷野俊哉】
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テレビ黄金期に司会を務めたフジテレビ「夜のヒットスタジオ」。戦場のような生放送の現場には、思いも寄らない忘れ物もあった。
「クリスマスイブの夜に、全ての生放送が終わったわけです。廊下を歩いていたら、前から知り合いのADさんが歩いて来た。フジテレビの廊下ですからいいんですけど、冬場で寒いのに白いTシャツにジーンズで、真っ赤な10オンスのボクシンググローブを着けている、小柄な人の手を引いている。何かと思ったら、ボクシング用のカンガルーが1匹取り残されて、湘南動物(プロダクション)が忘れて帰っちゃったんですよ。何匹か入れてたんですけどね。『どうしたの』って聞いたら『6スタにいた』って言うんです」
クリスマスイブの夜にフジテレビに取り残された、1匹のボクシングカンガルー。
「携帯も何もない時代です。80年代ですから。明日の朝に湘南動物に連絡を取って引き取ってもらうまでは、クリスマスイブの夜で嫌だけどADが面倒見るしかない。かわいそうだなと見てたら、河田町にあった局舎のアーチの外に出て手を挙げたら、24日のクリスマスイブの夜でもタクシーが止まってくれるんですよ。止まって、ドンって自動扉が開いて、一緒に入って行くんですが、動物ですよ。何台かやり過ごされてました。で、しょうがないっつうんで、僕も含めて一緒に戻って。それで衣装部屋のところで、子供用のトレンチコートとちっちゃなハンチングと子供が掛けてもいいようなサングラスとか。そういうのを着せて、なんとかタクシーに乗せたんです。運転手さんは、ボクサーだと思っているんです」
カンガルーを連れたADは、無事にタクシーに乗り込んだ。
「後で聞いたら、乗ったら興奮してるから座りながらリアシートで軽くワークしてた。たまたま運転手さんがいい人で、ボクシングが大好きだった。『後楽園ホールに行くわけじゃないですよね』って。『ずいぶんちっちゃいクラスですね』って言うんで『モスキート級です』って。そこはハンチングでわかんないですよ。顔は暗めで、動いてるからね。アパートに着いて外階段があってから2階へ。1階で若者たちががクリスマスパーティー中だった。外階段で上ると『うるさーい』っと怒られるんですよ。なんでかって、ドーンって上がるんですよ。1歩、1歩じゃなくて両足で上がって行くとドーンって響く。それで、部屋に入って、一晩中シャドーボクシングの相手をしてミットで受けて。次の日の朝に連絡取って帰って。いい時代なんですよ。そんなのを思い出しました」
昨年のトーキングブルースでは、自身のしゃべり屋って人生を総括した。時代によって、しゃべりも変化して来た。
「2025年って万博があったり、総裁選があったり、いろいろしゃべりが注目される局面があったと思うんです。去年もあったけど、いろんなことが起きてますから、世界は流動化し始めている感じがするんです。今までの固定観念、今までの規制外の規則でね。安定政党の周りに連立する公明党みたいのがあって、そして安定多数を取ること、ひいては国民の安心安全につながるという時代じゃなくなっちゃうんですよね。だから何を信じていいのか、何が幸せかとか、何が保守なのかとか分からなくなっちゃう」
判断の基準となる固定観念、価値観が時代とともに大きく変化している。
「だから古くは(米国の政治経済学者の)フランシス・フクヤマ氏とかいろんな人が言っているんですけども、民主主義とか資本主義とか、そういうこれ以上のものがまだ発見されていない、開発もされてない。人間が生み出した民主主義ひとつとっても、それが極みまで来ちゃったと思うんですよ。民主主義のコストとか功罪とか、民主主義だからっていいわけじゃない。でも、全体主義や帝国主義よりはいいはずだと思いたいじゃないですか、少なくとも。でも中国みたいな独裁の方が共産党1党独裁の方が、事は早く進みます」
習近平国家主席に率いられた、中国は日本の経済、社会に大きな影響を持っている。
「補助金がいっぱい吸って、原油いっぱい吸って、安い電気自動車、安い太陽光パネルが大量生産されて、日本のビーチが駆逐されているわけですから。そういう意味では、全体主義はよっぽどスピーディーだけどね。我々は一応、西側という古い枠組みで捉えちゃえば、やっぱり民主主義しかないだろうと。ギリギリのところまで来ちゃった気がする。だから、民主主義が発展していいところまで来たって言いたいんじゃなくて、民主主義の限界も分かっちゃって、これ以上のものが発見されないという時代に来たんだと思うんです。もう人類お手上げだと思うんです」
(続く)
▼「古舘伊知郎トーキングブルース『2025』」
26年1月18日 福岡・Zepp福岡
26年2月12日 愛知・Zepp名古屋
26年3月7日 大阪・Zeppなんば
26年3月20日 神奈川・Zepp横浜
◆古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)1954年(昭29)12月7日、東京都生まれ。立大卒業後の77にテレビ朝日入社。同8月からプロレス中継を担当。84年6月退社、フリーとなり「古舘プロジェクト」設立。85~90年(平2)フジテレビ系「夜のヒットスタジオDELUXE、SUPER」司会。89~94年フジテレビ系「F1グランプリ実況中継」。94~96年NHK「紅白歌合戦」司会。94~05年日本テレビ系「おしゃれカンケイ」司会。04~16年「報道ステーション」キャスター。現在、TBS系「ゴゴスマ」水曜日コメンテーターなど。血液型AB。



