元NMB48の日下このみ(30)が、新たなステージで活躍中だ。

日下は11年12月、3期生としてNMB48に加入。グループ加入前からダンス好き。振付師になると目標を掲げ、48グループ初のメンバーによる振り付けも担当した。

19年1月に卒業してから7年。フリーの振付師として活動する中で、NMB48の「初めてのオール」のカップリング曲「ショートケーキとショートボブ」の振り付けを依頼された。STU48の「ポニーテールをほどいた君を見た」「檸檬とレモン」などを担当していたが、古巣からの依頼は「青春念仏」以来だった。

「青春念仏は振り付けは担当したんですが、コロナ禍でほとんどライブで披露できなかったんです。だから、今回が実質初のような感じです。いっぱい目標がある中で、NMBの振り付けを担当するのは一つの目標だったので、ここまで来られたっていうのはあります」

グループ卒業生だからという“色眼鏡”で見られかねないこともあり「依頼をしてくださる側の気持ちとしては元グループ出身の人って使いにくそうな気がするんです」という自覚もあった。だからこそ「卒業から7年の時間が良かったのかなって。ちょっと変な曲で、この曲の振り付けに私の名前が浮かんで依頼をもらえるのがうれしい」と、プロの振付師日下このみとして評価されたことを素直に喜ぶ。

卒業後はスキルアップに励んできた。米ロサンゼルスにダンス留学したり、暇があればダンスレッスンに通う。

「アイドルをやりたいけど、ダンスが苦手な子って結構いる。できない子の気持ちが分からないと指導ができないと思ったので、あえて自分のやったことのないダンスのジャンルに飛び込むと初心者の気持ちが分かる。振り付けの幅が広がるのはもちろん、指導の質を上げるために学びに行ってます」

ダンサー、振付師のYOH UENO氏の影響を受けているとはいうが「振付師として、いろんなジャンルに触れたり、いろんな先生に学ぶって大事と思っています。1人の先生にがっつり絞ってしまうと、その人のイズムを受けすぎてしまう。体の動きって1回使うと覚えてたりするんですよ。ステキだなと思うところをフワッと、いろんな方からインスピレーションを得たい」。

K-POPアイドルや男性グループからも貪欲(どんよく)に吸収している。

「K-POPの振り付けってアメリカのダンサーが振り付けてることが多いんですよ。全然違う視点で振り付けしてるんだろうなって感じますね。男性のダンスも全然違いますね。最近、男性のアイドルグループに振り付けされている方のレッスンを受けたんですが、体の使い方が全然違う。ジャンルによって体の使い方が違いすぎて奥が深い。深海やんって」

ダンスの奥深さを知れば知るほど、「体の使い方もそうですし、こういう栄養を取った方がいいという知識も増えた。ケアができるようになって、気合だけで戦って次の日に筋肉痛になってた現役の時よりも体は元気」といい、現役時代、グループメンバーに振り付けしていたときのことを「教え方も下手だったし、今だったら『こう動いたら疲れないよ』って教えてあげられるから恥ずかしいです」と、申し訳なさそうに話す。

だが、こうした蓄積もあって、指導の幅は振り付け以外にも広がっている。楽曲の振り付けだけでなく、アイドルグループのライブ演出、立ち上げ、育成に携わるようにもなった。

「昨年に結成された『log you』は育成から関わらせてもらってます。ワンマンライブの演出、映像なども任せていただいて『私にこんなに任せてくださっていいの?』ってくらい。やりがいを感じてます」

育成には自身のアイドル人生が役立っている。

「私はアイドルとしてロースタートでしたけど、今となっては良かったと思っていて。どうやったら見てもらえるかとか過程も経験できた。選抜入りもさせてもらったし、そこから落ちることも経験できた。ダンスだけを教えるだけじゃなくて、アイドルとしてのプロフェッショナルな心の持ち方、自分のプロデュースの仕方を伝えることもできる。すべてが今の指導に生かせていますね」

1月に30歳になった。3期生のメンバーとは今も交流があるという。

「先日も会ってきたんです。もう芸能を辞めている子ですけど、ちびっこちゃんにも会ってきました」

気が付けば、アイドル生活の長さと同じ時間を振付師として無我夢中で歩んできた。

「全部仕事に振りきってきてやれることをやってきた。最近、それに気付いて。あれ? もう30? みたいな(笑い)。でも、人と道を作っていくことの魅力を感じ始めてきて。仕事でも恋愛でも言えることだと思いますけどね。30歳ってちょっと楽しみでした。アイドル時代も相当密度の濃い経験をさせてもらいましたけど、それを超えるフリーランス人生にしたいと思っていた。コロナ禍の時はもどかしさもあったけど、ここまで仕事をいただけるようになったのはありがたいですね」

古巣から振り付けを頼まれるという1つの目標を達成し、今後やってみたいことを聞いてみた。

「この仕事を楽しくずっと続けたい。大きな目標としてそれが軸なんです。その道中にCMもやりたいし、海外のお仕事もやってみたい。舞台系の振り付けも興味はあります。先日、『メリー・ポピンズ』を見させてもらって、演出も振り付けも、お客さんに100%狙って見せているのがすごすぎて圧倒されました」

やってみたいでやらせてもらえるほど甘くないのは身をもって分かっているが、何に対しても好奇心は尽きない。30代も力強く切り開いていくに違いない。【阪口孝志】