「金八先生」がようやく「大学卒業」を果たした。歌手で俳優の武田鉄矢(59)が、福岡県宗像市の母校福岡教育大から名誉学士を贈られ12日、同校で行われた授与式に出席した。会場には300人の学生が集まり、授与式の後はライブで「贈る言葉」などのヒット曲を披露。教師の卵たちに「教師の心得」を説いた。

 名誉学位記の額を手渡されると、武田は満面の笑みを浮かべた。「放り出したものは放り出したまま終わらない。こういうことってあるんだね」と興奮気味だった。3年で教育実習も経験したが、4年で上京しデビュー。母イクさん(享年78)はその後もずっと学費を払い続けたが、結局2度と大学に戻ることなく8年で中退した。「母親からも『卒業だけはしてくれ』と言われていた。母が亡くなって10年。花を買ってありがとうと言いたい」と母へ感謝の言葉を贈った。

 79年にスタートした「金八先生」はシリーズ8作を終えた。約200人の「教え子」を送り出した。ドラマとはいえ、教育界への貢献が母校に認められ、68年の入学以来、40年かけて大学卒業の日を迎えた。「いつも生徒に卒業証書を渡すばかりで、今日ようやく自分が証書をもらえましたね」と、笑みを浮かべた。

 夏休み中にもかかわらず、会場は300人の学生で満員。ネットでライブ中継された別室にも200人が集まった。授与式後にはライブで海援隊の曲を披露し、「先輩教師」として未来の教師に教師の心得を説いた。「いい教師とは謎を持っている先生。子供にわかってもらおうとすると嫌われる」「教師は生徒1人1人の目を見なさい」と金八先生の経験から生まれた教師論を熱く展開した。「話術がすごいと思いました。謎を持てとか、印象的な話もいくつかありました」と学生自治会の守田雅都委員長(18)は感想を話した。

 「いつか『鉄学』として講座をやれたら。地域の人にも来ていただけたらいいですね」と武田は母校での講義にも意欲的。さらに「金八シリーズ」も近くフィナーレを迎えることを明かし「金八ももう定年ですから。ここが僕の原点なので、ここに戻ってきたいですね」と母校での収録を希望した。【前田泰子】