岸田文雄首相は28日の参院予算委員会で、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた森喜朗元首相への聴取の可能性に言及した。「関係者の1人であり、政治責任を明らかにするために必要な方ということで含まれ得る」と述べた。これまでの自民の追加聴取で、森氏の資金還流への関与を示す証言が出たかと問われ「今の段階で内容は明らかにしない」と述べるにとどめた。

森氏は既に議員を引退していることもあり、聴取の実現は見通せない。立憲民主党の長妻昭政調会長は記者会見で「森氏の聴取さえしないのは、どう考えても理解できない」と主張した。

自民は参院予算委理事懇談会でも、聴取対象に森氏が含まれる可能性があるとの認識を野党側に示した。追加聴取を行った理由として、2月に公表した自民の聞き取り調査の結果、2022年3月に安倍派幹部が資金還流を巡り会合を開いた可能性が出たためだと説明した。

理事懇談会後、立民の石橋通宏・野党筆頭理事らが記者団に明らかにした。石橋氏は「2月の段階で22年3月の会合が浮上していたのに、これまでの審議では一貫して認めてこなかった。全ての審議が吹っ飛ぶ話だ」と批判した。自民執行部は聞き取りを通じ、22年3月、当時会長の安倍晋三元首相、西村康稔、世耕弘成両氏と前任会長だった細田博之衆院議長(当時)による幹部会合が開かれたと認識しているとみられる。

安倍派は長年、パーティー券販売ノルマの超過利益を議員に還流してきた。22年4月、当時会長だった安倍氏が中止を指示したが、死去後に復活させた。(共同)