激動の衆院選は、結局は野党分裂で自公政権が3分の2の議席を獲得する圧勝に終わった。当初は期待感が高かった小池百合子代表の新党「希望の党」だが、失速。小池氏の「排除」発言で、枝野幸男代表の新党「立憲民主党」が支持を拡大したが、野党共闘が実現したのは北海道、新潟、沖縄だけだった。ノーベル文学賞には、村上春樹氏ではなく、日系英国人のカズオ・イシグロ氏が選ばれ、ハルキストは複雑な表情。そんな10月の言葉から-。
記者A 「一寸先は闇」とは、政界でよく耳にする言葉だが、公示前、本当に日単位でなく時間単位で政治情勢が変わっていった。
記者B 政治家の選挙中の言葉は、一言一言が大きな結果をもたらすものだと実感させられた。
デスクA なんで小池氏は、あの発言をしてしまったのかね。
記者C 先月29日の「排除」発言前、小池氏は、かつてないほどの追い風を受けていた。選挙結果を受けて、自ら「おごりがあった」と反省したように、気分が高ぶっていた中、飛び出た言葉だった。
記者D 小池氏を挑発していた小泉進次郎氏(36)が「出ても無責任、出なくても無責任」と批判した。おっしゃる通り。自民党内で「表彰ものだ」との声も上がった。
記者A 「側近」の若狭勝氏(60)の「次の次」発言も、小池氏出馬の期待をしぼませた。
記者B 小池氏が事実上率いる都民ファーストの会の音喜多駿都議(34)らの離党も大きい。小池氏へのふわっとした不安感に、現実的な説得力を持たせた。
記者D 政党だから、基本理念で「排除」するのはある意味当たり前だが、安保法制で希望の党と一致できない民進党のリベラル勢力の反発とうまく合致した。公示1週間前に新党を立ち上げた枝野氏が、一気に期待感をさらった。
デスクA 立憲民主党の枝野氏は、討論会でも、もっとも切れがあったね。
記者B 上からではなく、草の根から、下からの政治。安倍1強という「上」という悪役に対する「下」「草の根」の正義の味方に躍り出た。日本人の判官びいきも風になった。
デスクB 良くも悪くも、小池氏が最初から最後までかき回した選挙戦で、結局、誰が得をしたかといえば、安倍政権だった。
記者B 小沢一郎氏(75)を追って盛岡市に行った時、小沢氏を見つけた高齢女性が「小沢さん、野党共闘だよ」と声を掛けました。小沢氏も「その通り」と返した。安倍1強を何とかしようとするなら、それしかなかった。自己都合で解散した首相を震え上がらせることができたのに、と思うと、希望の党に飛び付いた民進党の面々に女性の言葉を聞かせてあげたい。
記者A 元秘書への暴言暴行疑惑で自民党を離党した豊田真由子氏(43)も、「ハゲ」の一言で子どもにも名前を知られるようになった。必死におわびを続け、実績を訴えたが結果は落選。政治家の一言というのは、本当に大きい。
デスクA ノーベル文学賞に、カズオ・イシグロ氏(62)が決まった。
記者D 都内に集まった村上春樹氏(68)のファンは、イシグロ氏と村上氏が互いに認め合っている作家と知っていた。複雑そうに「何と言っていいか分からない」と言いながらも、イシグロ氏を祝福していました。
記者B 公式戦29連勝の新記録を樹立した将棋の最年少プロ、藤井聡太四段(15)は来春の高校進学を決めた。
記者C 中学生でプロ入りした加藤一二三・九段(77)、谷川浩司九段(55)、羽生善治棋聖(47)、渡辺明2冠(33)も高校に進学している。ある意味、定跡。将棋一本に専念するか、進学するか悩んだ末、出した一手。「すべてのことをプラスにする気持ちでこれからも進んでいきます」と藤井。こちらは、純粋に応援したくなる一言でした。
<政治>
▼亀井静香元金融担当相(80)「一緒にやっていく相棒がいない」
5日 衆院選不出馬。政界引退も表明。今回の衆院選では亀井氏同様に、ベテラン議員の引退が相次いだ。
▼音喜多駿・都議(34)「中学校の生徒会規約以下。近代政党の体をなしておらず、独裁が可能」
5日 小池都政を支えたファーストペンギンが、都民ファーストの会を離党。
▼自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長(36)「出たら都政を投げ出す無責任。出ないなら党の代表が首相になれない無責任。出ても出なくても無責任のジレンマに陥った」
同日 小池都知事の衆院選出馬をけん制。この言葉が、有権者の小池氏不信にダメを押す。
▼小池百合子・希望の党代表(65=東京都知事)「ユリノミクス」
6日 同党の衆院選公約で、アベノミクスに対抗した経済政策を発表。しかし、選挙中はほとんど触れず。
▼豊田真由子氏(43)「みすぼらしい選挙戦であります」
10日 衆院選公示の第一声で訴えたが、落選。
▼石原慎太郎元都知事(85)「今度の選挙は候補者たちの卑しい人格が透けて見える。その中で筋を通した枝野は本物の男にみえる」
16日 「排除の論理」に屈さず筋を曲げなかった枝野幸男・立憲民主党代表に、立場を超えてエール。
▼山尾志桜里議員(43)「1票を投じてくれた地元のみなさんのおかげ」
23日 ダブル不倫報道を乗り越え、愛知7区で自民候補に834票差で辛勝。
▼小池百合子代表「都知事に当選、都議選でパーフェクトな戦いをし、ガラスの天井を破ったかなと思ったが、『鉄の天井』があることを知った」
23日 出張先のパリで衆院選惨敗に言及、自身の「排除」発言が敗因で、鉄の天井にしたのは一体、誰?
<社会>
▼千駄ケ谷の書店「ブックハウスゆう」の店主、斎藤祐(たすく)さん(72)「複雑だが、日本の血を引いた人だから我慢します」
5日 ノーベル文学賞に村上春樹氏を期待していたが、カズオ・イシグロ氏に決まり、複雑な表情。
▼小松博文容疑者(32)「妻から別れ話を切り出された。妻に子どもと車を引き渡すことが不満だった」
6日 茨城県日立市で妻子6人を殺害し、自宅に火をつける。殺人容疑で逮捕。
▼榊原定征・経団連会長(74)「日本の製造業の信頼に影響を及ぼしかねない、極めて由々しき事態だ」
10日 無資格従業員による検査が発覚した日産自動車、組織ぐるみのデータ改ざん問題の神戸製鋼と、日本を代表する企業の不正問題に苦言。27日にはスバルでも無資格検査問題が発覚。
▼石橋和歩容疑者(25)「注意され、キレて、追いかけた」
10日 今年6月、東名高速道路で、同容疑者による進路妨害で停止させられた乗用車が大型トラックに追突され夫婦が死亡。駐車位置をめぐる注意への逆恨みとみられる。「あおり運転」は社会問題に。
▼タレント清水良太郎容疑者(29)「使った覚えはない」
12日 ものまねタレント清水アキラの三男が、覚せい剤取締法違反(使用)容疑で逮捕。その後認める。
▼13年7月に過労死したNHK記者佐戸未知さん(当時31)の両親「私たちや娘の苦しみを背負う人が、2度と現れないことを切に願っている」
13日 佐戸さんの過労死をNHKが4日に公表したのを受けて、会見。佐戸さんは、婚約者に指輪をはめてもらい、荼毘(だび)に付されたという。
▼井山裕太7冠(28)「棋士人生の中で、今がいちばん成長できている」
17日 囲碁の名人位を奪還し、初の7冠返り咲き。
<国際>
▼スペイン・カタルーニャ州のプチデモン知事「独立国家になる権利を勝ち取った」
1日 州独立を問う住民投票で90・2%賛成の結果を受けて。27日には州議会で「公式の独立宣言」可決も、スペイン政府が州の自治権停止。対立は決定的に。
▼日本出身の英作家カズオ・イシグロ氏(62)「冗談かと思った。フェイクニュースがはやっているので」
5日 下馬評にも上らずブックメーカーも対象外だったが、ノーベル文学賞。
▼市民団体の世界連合体ICAN(アイキャン)・ベアトリス・フィン事務局長「広島、長崎の被爆者全員へも与えられる賞だ」
6日 ノーベル平和賞を受賞したICAN。核兵器禁止条約への被爆者の貢献を強調。12月の授賞式には被爆者も出席予定。
▼トランプ米大統領(71)「本当に言ったのなら、IQテストで比べなければ」
10日 ティラーソン国務長官が自身を「ばか」と呼んだと報道されて。