成人式当日に、晴れ着が届かない-。成人の日の8日、着物の着付けやレンタルを行う業者「はれのひ」(本社・横浜市)と契約した新成人から、「店に誰もいない」「店と連絡が取れない」などといった相談が神奈川県警などに相次いだ。事態を知った別の業社らがSNSなどでレンタルや着付けの呼びかけを行うなど手助けの輪も広がったが、手配が間に合わず、親や友人らに晴れ姿を披露できなかった人も。突然の店舗閉鎖により、横浜市や東京都八王子市などで300人程度の新成人がトラブルに遭ったとみられる。

 「はれのひ」で振り袖のレンタルと着付けを予約していた横浜市の女子大生(19)は、一生に1度の成人式に参加できなかった。「7日夜から店と連絡が取れず、成人式の翌日が大学のテストということもあって諦めました」と悔しそうに話した。

 式前日に自宅に届く予定だった草履やバッグなどの小物類が届かず、心配になり店舗に電話をしてもつながらない。着付け会場のホテルにも問い合わせたが、「こちらも連絡が取れない」と言われた。ショックで、この日昼までは式に出席する気持ちにはなれなかったという。

 それでも、同級生らがSNSにアップする写真を見て「昔からの友達もたくさんいて、寂しくなった。式に出られなくても、みんなで写真だけでも撮りたい」。親戚の着物を借り、着付け会場のホテルが急きょ手配した別の業者に着付けをしてもらった。最後は幼なじみと記念撮影をして笑顔も見せたが、「(業者は)どういう神経をしているのか。理解できない」と怒りを隠さなかった。「はれのひ」には、事前の写真撮影なども含めた料金約30万円をすでに支払っており「親にも申し訳ない。少しでも返してほしい」と訴えた。

 08年創業の「はれのひ」は、本社を置く横浜市の他に東京都八王子市、茨城県つくば市、福岡市に店舗を構える。横浜と八王子の店舗では、この日店に誰もおらず、電話もつながらない状態。横浜市の店が入る商業施設の関係者によると、6日までは7人ほどの従業員で普段通り営業をしていたが、7日から誰も姿をみせなくなったという。同市内にある本社も8日、人がいる気配はなかった。

 よりによって、成人式の日に突然の店舗閉鎖。同社ホームページなどには説明の記載はなく、その理由は分かっていない。神奈川県警などには8日、多数の被害相談が寄せられており、今後警察も対応を検討するとみられる。【太田皐介】