将棋界初の「中学生六段」に昇段した藤井聡太六段(15)と師匠の杉本昌隆七段(49)と公式戦初対局が8日、大阪市の関西将棋会館で始まった。第68期王将戦1次予選2回戦で師弟対決が実現した。

 関西将棋会館4階の「水無瀬の間」、午前9時40分ごろ、紺のジャケットを着た藤井が入室。約5分後、グレーのスーツ姿の杉本が現れた。盤を挟み、相対した2人は軽く一礼。振り駒の結果、杉本が先手に決まった。午前10時、お互いに深々と一礼し、対局を始めた。注目の師弟対決にはテレビカメラ約10台、23社、約50人の報道陣が詰めかけた。

 藤井は2月の朝日杯オープン戦本戦準決勝では羽生竜王を破り、15歳6カ月の最年少、中学生初となる棋戦(公式戦)優勝。現在、公式戦は13連勝中。将棋界では公式戦で弟子が師匠に勝つことを「恩返し」という。師匠との対決で成長した姿を見せ、恩返したいところだ。

 先手の杉本は約2分間を使い、角道を開けた。藤井はいつものようにお茶を一口飲み、盤に向かった。杉本の戦型は中飛車。得意戦法を弟子にぶつけた。

 王将戦の組み合わせが決まり、藤井が1回戦を勝ち上がれば、弟子と対局の可能性があることを知った杉本は意識的に藤井との接触を避けるなど、勝負師として本気モードに突入してきた。一方で師弟対局に「公式戦での対局は弟子の成長を実感できるひとときになるはず」と楽しみにしてきた。

 藤井は本年度の対局数、勝数、勝率、連勝数は全棋士中1位。将棋界の記録の主要4部門となる4冠独占も視野に入っている。

 持ち時間は各3時間、夕方には決着する見込み。