財務省は12日、森友学園への国有地売却をめぐる決裁文書14件に、改ざんがあったことを認めた。安倍晋三首相の昭恵夫人に関する記述の削除が複数におよび、首相や麻生太郎財務相の名前も消されていることが明らかになった。

 麻生氏は財務省で、文書改ざん問題について報道陣に説明し、自身の辞任については否定した。

 森友学園への国有地売却の経緯を記録し、決裁を受けた文書が、当時の理財局長だった佐川宣寿・前国税庁長官(辞任)の国会答弁と食いちがうため「佐川の答弁に合わせて書き換えた」と説明。答弁に合わせる形で資料を書き換えるのはおかしいとの指摘には「誰か変な感じしますか?」と記者団に逆質問し、けむに巻く場面もあった。

 麻生氏の任期中に財務省で起きた問題だけに、与野党から責任論が噴出している。麻生氏は「私の進退については考えていません」と辞任を否定。「責任を取るほどの問題ではないということか」と再度問われても「今、申し上げた通り」と重ねて否定した。

 削除された部分には麻生氏の名前も登場する。改ざん問題の指揮系統のトップは誰か問われると、麻生氏は「そんな偉いところじゃないと思いますが、最終的な決裁としては佐川」とし、9日に辞任した佐川氏を責任者とした。麻生氏は改ざんの事実を知ったのは「11日」とし、当時、改ざんについて佐川氏より上の人物への報告や相談がなかったのか問われても、「この文書に関してはないと思います」と否定した。

 麻生氏は自身の進退を否定したが、与党内にも、麻生氏の引責は不可避との声が出ている。麻生氏は、首相の盟友で安倍政権の屋台骨でもあり、「辞任すれば首相の政権運営がもたない」(自民党関係者)という、官邸内の事情があるためだ。首相も会見で、「(全容解明の)調査を進めていく。麻生財務相には、その責任を果たしてもらいたい」と、麻生氏を続投させる方針を示したが、官僚だけに責任を押しつけるようなやり方は国民の反発を招きかねず、今後も進退論はくすぶりそうだ。