昨年11月に県内で公開されたドキュメンタリー映画「イーちゃんの白い杖」(橋本真理子監督)の自主上映会がこのほど、焼津市の「おおとみリウマチ整形外科」で行われた。

本作は「イーちゃん」こと、焼津市出身の小長谷唯織(こながや・いおり)さん(28)の半生を追った。生まれつき目が見えず、多くの困難にぶつかった。だが、同じく障がいがある弟の息吹さん(26)の懸命に生きる姿や、家族に支えられて壁を乗り越えてきた。

上映会の来場者は100人を超え、超満員。上映後は拍手が起こり、涙を流す観客もいた。唯織さんは「全員に生まれてきた意味がある。障がいの有無にかかわらず、理解を深めていただきたい」と訴えた。同整形外科に昨年3月から、あん摩マッサージ指圧師として勤務。「皆さんに支えられて、コミュニケーション能力や技術が向上してきた。いやしと安らぎを与えたい」と意欲的だった。

今春には都内でも公開予定。今後は英語字幕版も製作し、海外の映画賞参加も視野に入れている。20年以上、唯織さんを追い続ける橋本監督は「取材を通じて私も元気をもらった。(観客には)何か1つ『来てよかった』と感じてもらえたらうれしいです」と話した。【古地真隆】

◆イーちゃんの白い杖 テレビ静岡制作の番組「イーちゃんの白い杖-100年目の盲学校-」(1999年)と、「いおりといぶき-私たちが生まれた意味-」(2010年)を再編集。新作カットを加えて映画化された。99年の番組はFNSドキュメンタリー番組特別賞。10年の番組は世界子どもの権利賞グランプリ、FNSドキュメンタリー番組優秀賞、厚生労働省「児童福祉文化財」に選ばれた。