「よく頑張った」「いい働きぶり」-。働き方改革が注目を集める中、社員同士が互いの仕事を褒め合い、モチベーションを高める取り組みが話題だ。

IT企業のシンクスマイル(東京・赤坂)が開発したアプリ「RECOG(レコグ)」では、パソコンやスマートフォンを用いて「アイデア」「チームワーク」など相手の褒めたいポイントを6種のスタンプから選び、簡単なコメントを添えて送信する。褒められた社員の活躍ぶりはアプリ内の掲示板に掲載され、全員が見ることが出来る。同社の新子明希社長(46)は「仕事をする上において、過剰な労働時間を抑えることも大切だが、今の若者は自分を認めてくれる環境づくりが重要であることが分かった。職場の良好な人間関係や、やりがいを重視し、自分の仕事が誰かの役に立っていることを実感させることが大切」と話した。

同社は昨年5月からレコグの提供を開始。現在、企業約70社や宮崎県日南市などの自治体も導入している。1万5000人以上が利用し、仕事への意欲向上や離職率が3割ほど改善した例もある。褒められた社員にはポイントも加算され、累積ポイントで食事券や大型テレビなどに交換できる。昨年、池上彰氏が出演したテレビ番組で「褒めコミュニケーション」と紹介され、認知度も一気に高まった。「反響の大きさに驚くと同時に、多くの方が我々と同じように感じているんだなと思った。提供してきたサービスに自信を持った」と、新子氏は力説した。

その他にも、同僚への感謝の気持ちを手書きのメッセージで渡し、職場の人間関係を円滑にする取り組みもある。全日本空輸は01年から社内で「褒め合う文化」を築くために「グッジョブカード」を活用。14年から1通につき1円を社会貢献活動に使い、児童養護施設に寄付している。

今年4月から働き方改革関連法が施行される。企業で働く人に大きな影響を及ぼす改正の1つが「時間外労働の上限規制の導入」で、一部職種を除いて時間外労働の上限が月45時間、年360時間が原則となる。特別な事情があり労使協定で合意しても、月100時間未満、年720時間以内などにする必要がある。これらの上限を超えた企業は、罰則として6カ月以下の懲役か30万円以下の罰金が科され、企業側は対応に神経をとがらせている。

日本企業は出来ないことを叱って育てるスタイルが長らく主流だったが、叱るから「褒める」に軸足を移しつつある。褒め合うことが、「働き方改革」につながるのかもしれない。