オマーンの代理店側に日産の資金を不正送金し、約5億5000万円の損害を与えた会社法違反(特別背任)の疑いで、再逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)の妻キャロルさん(52)が、東京地裁から証人尋問の日程調整の連絡があった直前に、日本を出国していたことが8日、明らかになった。キャロルさん側は出国について「逃亡ではない」と強調。さらに日本に戻り、東京地検特捜部の聴取に応じる意向を示した。

弁護団の弘中惇一郎弁護士によると、ゴーン容疑者が4日に再逮捕された際、東京地検特捜部の係官がキャロルさんに「明日の午後1時に検察庁に来なさい」と話したという。「目的の説明もなく、任意聴取しますという話もなかった」といい「(聴取と分かっていれば)応じた可能性はあった」と任意聴取を拒否したとの見方には反論した。弁護団はキャロルさんに「意味がよく分からないから断っていいのでは」と助言したという。

5日午後1時に検察庁に出頭しなかったため、東京地検特捜部は任意聴取を拒否したとして刑事訴訟法の規定に基づき、東京地裁に対し、キャロルさんを証人として尋問請求したとみられる。6日、地裁からゴーン容疑者弁護団に、キャロルさんの証人尋問の日程調整連絡があったという。

キャロルさんは押収されなかった米国のパスポートを使用して5日夜に出国し、渡仏した。事前にゴーン容疑者弁護団に対し「窮状をフランスに訴えたい」と、出国についての相談があったという。弘中弁護士は「4月にいったん帰るという話があったから、予定通りでいいのではと言ったんですよ」と、急きょ出国予定を早めたと明かした。この日接見した容疑者は、妻を心配していたという。

一方、ゴーン容疑者の家族の弁護士はキャロルさんの日本出国を“逃亡”と報じた仏ラジオで「逃亡ではない。質問があれば答える」と反論。キャロルさんも別の仏ラジオで聴取に応じる意向を示した上で「夫の助けになるよう少しここでこの問題に取り組んだ後、日本に戻る」と話した。【近藤由美子】