東京都品川区にある介護付き有料老人ホームで、入所していた黒沢喜八郎さん(82)を暴行、殺害したとして、警視庁捜査1課は22日、殺人の疑いで介護職員だった無職根本智紀容疑者(28)を逮捕した。根本容疑者は「暴行を加えたことはありません」と容疑を否認。一方、黒沢さんの次女(52)は、暴行を受けた後搬送された病院で黒沢さんが「若い男に蹴られた」と最後の言葉を残したと明かした。

根本容疑者の逮捕容疑は、4月3日から4日にかけて品川区北品川の介護付き有料老人ホーム「サニーライフ北品川」の一室で、黒沢さんに暴行を加えて殺害した疑い。根本容疑者は当時、他の女性職員2人と計3人で宿直勤務をしていた。運営する「川島コーポレーション」関係者によると、根本容疑者は4日午前1時30分ごろ「(黒沢さんが)胸が苦しいと言っている」と自ら119番通報した。黒沢さんは病院に搬送されたが、5日午前6時過ぎに死亡。司法解剖の結果、死因は内臓損傷による出血性ショックで、背中の右側のあばら骨が折れていた。

黒沢さんは施設の2階の部屋に居住。廊下に設置された防犯カメラには、居室の入り口から廊下に上半身が出た状態であおむけの黒沢さんの左足を、根本容疑者がつかんで個室内へ引きずり込む様子が記録されていた。根本容疑者は10日、黒沢さんへの乱暴行為が施設により確認されたことと介護士の制服以外の私服で業務したことを理由に解雇された。施設関係者は「勤務態度に問題はなく明るい性格と聞いていた」と話した。

黒沢さんの次女によると、搬送先の病院の集中治療室(ICU)に駆け付けた4日午後2時過ぎ、それまで話すことが出来なかった黒沢さんが「若い男に蹴られて、やられたんだ」と、はっきりした口調で語ったという。施設に防犯カメラ映像を見せてもらうと、黒沢さんを引きずり込んだ後、根本容疑者が両手を広げた“飛行機ポーズ”をしながら居室から出てきたと明かした。次女は「(根本容疑者は)やってやったぞ、という感じだった。お父ちゃんは、もう帰ってこない。憎しみしかない」と怒りをあらわにした。