アベノマスクが進化した! 安倍晋三首相が3日、閣議や参院本会議で着用したマスクが前日までよりも大きくなったとインターネット上で話題になった。全世帯に布マスク2枚を配る政府方針についてもSNS上でお笑いネタとしていじられるなど、“アベノマスク”が盛り上がりを見せている。果たして布マスクでウイルス対策ができるのか、聖路加国際大学大学院の大西一成准教授に聞いた。

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配布予定の2枚の布マスクはどのようなものなのか。厚労省は管轄外だとして、詳細を示さず、内閣府も安倍首相のマスクの変化や着用枚数について「お答えできません」とし、現状では多くを語っていない。

大西氏は「布マスクでもウイルスは通る」と指摘する。繊維などを接着させ粒子の捕集性に優れる不織布マスクと違い、布マスクは繊維を織っているため隙間をウイルスが通る可能性が高い。実験などから10%のウイルスをカットできたら良い方だという。それでも「感染予防に貢献する部分がある。着けないという選択肢はない」と強調した。

マスクの目的は「ウイルスの取り込みを防ぐ。外に拡散しない。のどを保湿する」ことだという。マスクを着ける上で一番大事なのは「顔へのフィット」。顔とマスクの隙間を作らないことが重要で、髪の毛が挟まっていたり、鼻が出た状態だと「漏れ率が格段に違う」と話す。大西氏の実験では、不織布の漏れ率は86・2%、布マスクの漏れ率は100%に近いという。

また、ウイルスを防ぐためのマスク機能として、<1>フィルターを通さない<2>手についたウイルスを口や鼻に運ばない<3>隙間からウイルスが入るのを防ぐが挙げられるが、「不織布は<1><2>をクリア。布は<2>のみクリア」という。大西氏は「洗濯機で洗い続けると穴が大きくなり、よりウイルスは入って来る」とし、今後は「帰宅後は布面を触らず、ゴム部分を持って外し、その都度洗剤で優しく手洗いして」と呼びかけた。不織布マスクでさえも不十分なのに布マスクで国民の命は守れるのか。大西氏は「精神論ではウイルスは防げない」と警鐘を鳴らした。【佐藤勝亮】

◆大西一成(おおにし・かずなり)1978年9月14日生まれ。聖路加国際大学大学院・公衆衛生学研究科准教授。専門は、環境医学・公衆衛生学。環境計測調査、健康影響評価、予防対策の研究を融合し、気候変動や環境が及ぼす人体への健康影響の解明、対策について多角的アプローチで研究を行っている。著書は「マスクの品格」(幻冬舎)などがある。