潮風とともに清らかな音が響き合う。北海道有数の観光地である小樽運河。その近くにある大正硝子館の軒下、隣に流れる河川には、さまざまな風鈴がつるされていた。まだ少し冷たい風を受けて音色を奏でている。時に優しく、時に激しく。心地よい響きだ。

大正硝子館は新型コロナウイルス感染拡大防止のため臨時休業中だ。カーテンは閉められ、風鈴の音だけが響く。同店で働く金塚貴広さん(32)は「店を再開した時、観光客や地元の方にもきれいなガラスを見て、風鈴の音色を聞いて、少しでも楽しんでもらえたら。いつものにぎやかな小樽に早く戻ってほしい」と話した。

閑散とした堺町通りを音だけでもにぎやかにしようと、例年より1カ月早く風鈴をつるし、ガラスの街小樽にふさわしい爽やかな風物詩だけは守った。

たまに通りかかる人たちも、時折足を止めてはきれいな音色に耳を傾けていた。【佐藤翔太】