新型コロナウイルス感染拡大収束の見通しがつかない中、日本の観光産業も大打撃を受けている。国内外で多数の宿泊施設を運営する星野リゾート・星野佳路代表(60)はこのほど都内で取材に応じ、逆境下でも新たな可能性を見いだしていると語った。星野氏の意図や展望を、前後編2回にわたってニッカンスポーツコムで紹介する。

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コロナ禍で日本各地の観光地から外国人の姿がすっかり消えた。観光庁によると、19年のインバウンド(訪日外国人観光客)消費は過去最高の4・8兆円で、訪日外国人3188万人だった。ところが今年は感染拡大防止に伴う入国制限で、訪日客数は4月以降、ほぼゼロの状態が続いている。星野氏も「(星野リゾートの)京都の実績も、昨年は90%稼働したうち、約半数がインバウンドだったのですが、今年はそれが0になりました」と話す。

しかし同時に新たな可能性への手応えも得ていた。国内の旅行客、それも自宅から1~2時間圏内の近隣への観光を指す「マイクロツーリズム」だ。「先ほどの京都の場合ですが、(会社として)マイクロツーリズム市場を頑張りましたので、京都や大阪、兵庫などから来ていただいた方々のおかげで、7月は75%稼働しています。赤字になるというレベルにならなくて済みました」。浜松市にある宿泊施設「界 遠州」にいたっては、近隣からの観光客が増え、7月の稼働は90%を超えた。星野リゾート全体では「4分の3ぐらいの施設でだいぶ需要が戻ってきています」という。

これまでインバウンドの比率が高かった東京や大阪などは今も苦戦が続いているというが、「マイクロツーリズム市場に向けた商品を作ってプランを出すということがものすごく大事だと思っています」。

インバウンド市場の消失を、悲観しているだけではいけない。星野氏は、やはり激減した日本から海外に出掛けるアウトバウンド市場からのシフトも含めたマイクロツーリズムのより一層の充実が、ウィズ・コロナ時代に観光産業が生き残っていくための切り札になるとみている。後編では、新しい生活様式から見えた観光産業の希望に迫る。【近藤由美子】