コロナ禍でステイホームや非接触型の生活が定着している中でインターネット通販の消費者トラブルが増加している。

国民生活センターは今年1月から6月までのネット通販トラブルの相談件数が13万件を上回り、2019年度の消費者トラブルでは80歳以上の相談件数が過去10年で最高となったことを公表した。菅内閣がIT改革を進める中、ネット通販などの被害が広がり、「IT弱者」への対策も求められている。

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新型コロナウイルスの感染拡大よる「新しい生活様式」が浸透していく中でネット通販トラブルが拡大している。国民生活センターが公表した今年1月から6月までの半年間に寄せられたネット通販のトラブル相談件数は13万256件で3月以降の4カ月間の月平均では約2万3636件に上っている。「トラブルの割合は増加傾向にあり、5月には相談全体の30%を超えた」と、国民生活センターや消費者庁などが注意喚起を行っている。

2019年度の全体では60歳以上の相談件数は37万787件と、前年度の43万4826件を下回ったものの、逆に80歳以上は7万8303件と過去10年で最高となった。急速に進むIT社会の中で情報弱者となりがちな高齢者がトラブルに巻き込まれる傾向も顕著となっている。

相談事例には「高校生の娘がダイエット青汁を定期購入とは認識せず、申し込み、解約しようとしたら高額な料金を請求された」「初めてインターネット通販を利用したが、2週間たっても商品が届かない」「格安で販売されていた有名ブランドの時計を申し込んだら、写真と異なる偽物が届いた」「解約したはずの動画配信サイトから料金を請求されている」などが寄せられている。「出会い系サイトに誘導されて求められるまま、コンビニで合計30万円ほど電子マネーを購入し、支払った。結局何も進展せず、だまされていたと気づいた」(60歳代女性)という事例もある。

菅政権が進めるIT改革の一方で、ネット通販以外でも電子決済サービスの「ドコモ口座」を通じ、全国各地の銀行で預貯金が不正に引き出される被害が出るなど、デジタル化社会への不安が広がっている。「巣ごもり需要」の増大でネットビジネスは急速に膨らんでいるが、高齢者を中心とした「IT弱者」救済やフォローする対策が急務となっている。【大上悟】

<国民生活センターから消費者へのアドバイス>

(1)通信販売にはクーリングオフ制度はありません。事前に返品・解約の条件や販売事業者の連絡先を確認しましょう。(2)お金や個人情報の詐取等を目的とした詐欺的な通販サイトもあります。少しでも怪しいと思ったら利用しないようにしましょう。

(3)「お試し」のはずが、高額な料金を請求されたという相談が寄せられています。注文前に定期購入の契約になっていないか確認しましょう。

(4)未成年者のインターネットトラブルは、家族など周りの保護者が目を配って防ぎましょう。(5)不安に思った場合や、トラブルが生じた場合、「怪しいな?」と思ったら、すぐに消費生活センター等へ相談しましょう。