政府が「日本学術会議」が推薦した会員候補105人のうち6人を任命しなかった問題に対し、日本の映画人有志が怒りの声を上げた。

5日、是枝裕和監督(58)、俳優古舘寛治(52)らが連名で「日本学術会議への人事介入に対する抗議声明」を緊急発表した。

「菅義偉首相は、政府から独立して政策提言する日本学術会議の新会員について、会議が推薦した105名のうち6名を任命しませんでした。同会議が推薦した候補を首相が拒否するのは本来あってはならないことです。1983年には当時の中曽根康弘首相が『政府が行うのは形式的任命にすぎない。学問の自由独立はあくまで保障される』と答弁しています。この答弁を引き合いに出すまでもなく、憲法23条は『学問の自由は、これを保障する』と定めています。この規定は、単に個人が国家から介入を受けずに学問ができることだけでなく、大学など公的な学術機関が介入を受けずに学問できることまで保障しているとの考えが通説になっています」

「元々、日本学術会議は、第二次世界大戦に科学が協力したことを反省し、1949年に設立されたもので、内閣総理大臣が所管し、経費は国費負担としつつも、独立して職務を行う『特別な機関』と位置づけられました。除外された6人の候補者は、安保法制や共謀罪に異を唱えた学者たちです。今回の任命拒否は、会議の理念を踏みにじるだけでなく、『会議の自律性とそれによって守られる学問の自由への挑戦』であり『政府に批判的な研究者を狙い撃ちにし、学問の萎縮効果を狙ったとみられても仕方ない』(江藤祥平上智 大学准教授)ものです」

「内閣法制局は、安倍政権時代の2018年11月、同会議から推薦された人を『必ず任命する必要はない』ことを内閣府が示し、了承したことを認めています。その2年前2016年にも同会議の補充人事に難色を示し、3人の欠員が補充できませんでした。安倍政権がずっと狙っていたことを管政権が今回、ついに実行に移したのです。案の定、菅首相は『法に基づいて適切に対応した結果だ』と答え、加藤勝信官房長官も『政府として(任命除外の)判断をした。判断を変えることはない』という考えを示しました。菅政権は『説明責任』を果たさないこともまた継承したようです。また、菅首相は総裁選前のテレビ討論会で『政権の方向性に反対する官僚は異動』と公言していました。その矛先が学者、研究者に向けられたのです。次にその牙はどこに向けられるのでしょうか? この問題は、学問の自由への侵害のみに止まりません。これは、表現の自由への侵害であり、言論の自由への明確な挑戦です」(原文のまま)

脚本家でもある井上淳一監督は、報道各社の映画担当記者らに送った文書の中で「準備は二日。22人が名前を連ねています。志を同じくしている映画人は他にもいるでしょう。しかし、上記の理由で、このメンバーで今日、声明を出すことにしました。有志声明ですが、日本映画の最前線で闘っている者ばかりです」と説明した。22人は以下の通り。

青山真治(映画監督)

荒井晴彦(脚本家・映画監督)

井上淳一(脚本家・映画監督)

大島新(映画監督)

金子修介(映画監督)

小中和哉(映画監督)

小林三四郎(配給)

是枝裕和(映画監督)

佐伯俊道(脚本家・協同組合日本シナリオ作家協会理事長)

白石和弥(映画監督)

瀬々敬久(映画監督)

想田和弘(映画監督)

田辺隆史(プロデューサー)

塚本晋也(映画監督)

橋本佳子(プロデューサー)

古舘寛治(俳優)

馬奈木厳太郎(プロデューサー・弁護士)

三上智恵(映画監督)

森重晃(プロデューサー)

森達也(映画監督)

安岡卓治(プロデューサー)

綿井健陽(映画監督・ジャーナリスト)