新型コロナウイルス感染拡大で飛行機が大量に減便する一方で、自宅で食べる「リアル機内食」が人気だ。ANAは4回目となる国際線エコノミークラス機内食を26日から期間限定で発売する。高級ホテルで料理長を務めた経歴を持ち、実際にメニュー開発に携わるANAケータリングサービスの清水誠総料理長は「雇用を守ると同時に新たなチャンス」と捉えている。

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ANAの公式ECサイトなどで、26日から新たに通信販売されるANAエコノミークラス機内食メインディッシュは「和食」「洋食」の各詰め合わせ。それぞれ3種類計12食で9000円(税込み)。1食750円の計算だ。冷凍で配送され、フタをしたまま電子レンジで温められる。見た目も味も機内で配られる食事と同じ仕様だ。すべて機内で提供実績のあるメニュー。味のアレンジはしていない。清水総料理長はおすすめの食べ方を「食べる24時間前に冷凍庫から冷蔵庫に移し、自然解凍させてから電子レンジで温めること。機内でも同様にお出ししています」とアドバイスした。今回発売分の定番人気は「ビーフハンバーグステーキ デミグラスソース」と「牛すき焼き丼」だという。

清水氏にエコノミー機内食メニュー開発のポイントを聞くと「衛生面とそれに負けないくらいのおいしさの両方を追求すること」。こだわりは「気圧の関係で上空では味覚が鈍くなるので、だしを利かせるなどメリハリのある味付けが好まれます。機内が暗いので彩りにもこだわりますし、機内では食べることが楽しみになるので、食べた満足感も必要」などと挙げた。

ANAケータリングサービスではANAのほか、海外航空会社計9社の国際線機内食も請け負う。清水氏によると、多い時は、羽田と成田の2工場で1日計3万食を製造。コロナ感染拡大で今はピーク時の1~2割程度に落ち込んだ。通販は12月11日に開始。「旅行に行けないから家で機内食を食べたい」との声に応えると同時に、当初は大量の食材在庫を抱えており、フードロスをなくす側面もあった。第1~3回発売分は数日で完売。26日発売分の食材は一部増産するなど、新たな機内食通販ビジネスは好調が続く。

清水氏は「第2、3、4弾のオーダーが入ってくるとは」と反響の大きさに驚くと同時に「会社を立て直さないといけないし、雇用を守る上でも助かります。社員の間でも活気が出てきている」と明かす。さらに「エコノミー機内食はおいしくないイメージがある。これだけおいしいと少しでも知ってほしい。新たなビジネスチャンスだと思っています」と話している。【近藤由美子】

○…26日発売のANA国際線エコノミー機内食メインディッシュは約1000セットを販売予定。今後も販売を継続していく。「ビジネスやファーストクラスの機内食も食べたい」との声も上がっているが、ANA担当者は「未定です」。通販では、空港ラウンジで提供されるチキンカレー3キロ(税込み4500円)や機内用品も順次販売しており、ビジネス及びファーストクラスのお皿やカップの各セットを販売中(税込み6000~2万3000円)。昨春の大増便に向けて用意したもので、すべて新品。今後の増便時はあらためて購入する予定だという。

○…JALもコロナ禍の影響によるフードロスの削減を図るため、機内食の通信販売を手掛けている。現在、同社の公式ECサイトで国際線ビジネスクラス向けラーメン「『九州じゃんがら』豚骨風らあめん」を販売中だ。1セット10食で6480円(税込み)で、1月30日以降の発送となるという。