徳島県徳島市の阿波おどりを主催する阿波おどり実行委員会(委員長・内藤佐和子市長)が3月31日に突然、解散した件で、2019年(平31)から実行委と結んでいた「阿波おどり事業企画運営業務委託に関する基本契約」を解除された、イベント企画会社大手のキョードー東京を代表企業とする3社の共同事業体が12日、都内で会見を開いた。

キョードー東京の前田三郎取締役は、基本契約により委託される予定だった21、22、23年度の阿波おどり事業を受託できなかったことでこうむった損害の賠償を請求すると発表した。

その上で、業務委託契約を結んだ翌年の20年の選挙で当時、史上最年少女性市長として当選した内藤佐和子市長(37)が就任後、市側と連絡が取れなくなったと明らかにした。「意見を言うことだけは出来るとなっている実行委員会に、去年の4月以降、1回も呼ばれていない」とも指摘した。

阿波おどり実行委員会の突然の解散や、それに至るまでの流れに対し、徳島市のやり方が乱暴だという声がある。共同事業体が実行委員会と没交渉となっている状況に対し、共同事業体外しありきだったのではないか? との報道も一部でなされている。

内藤氏はジェンダーギャップ(男女格差)指数121位の日本の現状を打ち破る存在として期待が高い。3月には在日米国大使館と駐大阪・神戸米国総領事館から「勇気ある女性賞」を贈られている。その内藤氏に対し、前田氏は「(20年)3月に市長選が行われ、新しい阿波おどりを作ると公約した市長がなられたのに、交渉らしい交渉がされていない。理不尽。内藤市長のやり方が残念。新しい阿波おどりという公約がこういう結果だとしたら残念」と批判した。

阿波おどりの企画運営業務の民間への委託は、19年3月に決定した。その前提には、徳島市の観光協会と徳島新聞社が共催してきたものの、2017年(平29)6月に4億2400万円の累積赤字が発覚したことがある。18年に当時の遠藤彰良市長が、同協会への補助金の打ち切りと損失補償をしないと発表した。

同4月末には徳島市と徳島新聞社を中心とする新たな形で実行委員会が発足したものの、有料観覧席が売れず、同年の阿波おどりは2950万円の赤字を計上。2月の実行委員会では、半世紀近く主催してきた徳島新聞社から実行委員会から外れた上、市が中心的に関与することへの疑問の声が出て、遠藤市長が実行委員長から退任。同3月にはキョードー東京、同社のグループ会社のキョードーファクトリーと徳島市のネオビエントによる3社で構成した共同事業体と、同年度から23年度まで5年間、運営委託契約を結んだ経緯がある。

前田氏は「今の市長と前の市長の政策の違いだと言って、行政行為を継続しないのは良いのだろうか? そんな国、市役所はどこにもない。行政の継続性は重要なキーワード…、あって良いことなのかなと。行政行為の中断はきちんと議論しないと。ちゃんと行ってない」と首をかしげた。