菅義偉首相は政権発足から初の国政選挙で「3戦全敗」を喫し、政権運営へのダメージは避けられない。今秋までに行われる次期衆院選の前哨戦となる国政選挙が25日、投開票された。参院長野選挙区補選は立憲民主党の新人羽田次郎氏(51)、衆院北海道2区補選は立憲民主党の元衆院議員の松木謙公氏(62)、参院広島再選挙は野党推薦の新人宮口治子氏(45)が当選した。今後は与党内からも菅首相の責任を追及するなど逆風は一気に強まる。

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菅首相にとって次期衆院選への前哨戦は最悪の結末となった。「政治とカネ」をめぐる問題が争点となった広島と北海道、そして長野のダメージは大きい。自民党幹部は選挙期間中、本紙の取材に「不戦敗の北海道はしょうがないが、残る2つは絶対に負けられない。全敗すれば、次期衆院選への影響は計り知れない」と警戒感をあらわにした。

不安は、現実のものとなった。選挙買収事件で自民党に大逆風となった参院広島再選挙では、地元重鎮の岸田文雄前政調会長ら、幹部を投入して、信頼回復を連日訴えたが、野党結束の新人宮口氏に敗れた。

北海道2区は収賄罪で在宅起訴され、自民党を離党した吉川貴盛元農相の議員辞職に伴うもの。大逆風を前に自民党は公認候補の擁立を見送った。だが、「隠れ自民」とされる保守系無所属の立候補者に自主投票の公明、自民票が流れると予測したが、野党共闘の松木氏の前に敗れた。

参院長野補選では、故羽田孜元首相の次男で立憲民主党の羽田次郎氏が当選した。選挙戦序盤で「各種調査ほどの差はない」と、自民党幹部は強気を見せたが、結果は強固な地盤を誇る「羽田王国」に風穴をあけることはできなかった。

惨敗に菅首相の責任論は不可避で、政権運営に大きな影響を及ぼす。23日、4都府県に対して3度目の緊急事態宣言発令を決定したが、わずか17日間の「短期決戦」に、発令前から専門家から「延長」の可能性を指摘されるなど、一連の新型コロナウイルス対策に批判は高まるばかり。東京五輪・パラリンピック開催への懸念も広がる中で、衆院解散のタイミングを見極めている菅首相だが、求心力低下は避けられない。ここに来て次期衆院選を、7月の東京都議選とダブル実施する説も急浮上しているが、まさかの全敗で、軌道修正を迫られそうだ。【大上悟】