東京五輪聖火リレーは2日、沖縄県で2日目を迎え、前回64年東京五輪聖火リレー国内第1走者を務めた沖縄国際大名誉教授の宮城勇さん(78)が糸満市・平和祈念公園内で聖火をつないだ。新型コロナウイルス感染拡大で、本島では公道でのリレーを中止。前回大会聖火ランナー用復刻版シューズを履いた宮城さんの走行を見守ったのは、妻や大会関係者だけ。前回64年大会走行時とは違い、拍手や歓声は一切なかった。

宮城さんは「前回は日の丸と人と取材記者の3つの波に囲まれ、ものすごいにぎわいでしたが、このような状況下で仕方ないし、リレーが実施されて良かった」とホッとした表情。「ここ(=平和祈念公園)は平和の聖地。亡くなった人を思いながらリレーできたのではないでしょうか」。

生まれ育った浦添市を走る予定だったが、思わぬ形で希望がかなった。平和祈念公園内の戦没者の名が刻まれた石碑「平和の礎(いしじ)」には、父、保吉(ほきち)さんを含む親族7人の名前が刻まれている。趣味のロードバイクでは立ち寄り先に必ず公園を選び、お参りする。6月23日の慰霊の日は公園での式典に毎年参加した。聖火リレーで希望走行先の提出を求められた際、公園がある糸満市を挙げていた。「(親族の)何らかの導きみたいなものがあったのかな。思いが通るものなんだなと」。

保吉さんは27歳の時、第2次世界大戦で出征。マーシャル諸島で戦死した。宮城さんは当時1歳9カ月だった。「父たちも平和の聖地で、平和の象徴でもある五輪の聖火を掲げて走ったことを天国で喜んでくれたのでは。あの若さで戦死し、無念だったと思う。父や叔父らの短い生涯の分もしっかり生きないといけない」と思いをあらたにした。

コロナ感染拡大収束が見えない中、今夏の大会開催に逆風が吹く。「もちろんスポーツより命が大事ですが、大会を全力で応援するつもりです。それが選ばれた聖火ランナーの使命ですから」と静かに言った。【近藤由美子】

◆2日の聖火リレー 沖縄県で2日目を迎えた。新型コロナウイルス感染拡大のため、本島では公道でのリレーを取りやめた。宮古島市は全面中止となり、全国初めてのケースとなった。糸満市の平和祈念公園を周回するルートで開催。モデルで俳優の尚玄らが走った。離島の座間味村では、ランナーが手こぎ舟「サバニ」に乗り、海の上で聖火をつないだ。中2日空け、5日からは熊本県に入る。6日は急速な感染拡大を受け、熊本市では公道でのリレーを中止する。