今季限りでの引退を発表したプロ野球の西武松坂大輔投手(40)となじみ深い恩師らも、怪物の幕引きを惜しんだ。中学時に所属した江戸川南リトルシニア(東京)の有安信吾氏(80=現総監督)と大枝茂明氏(59=現東京城南ボーイズ監督)が、長きにわたる活躍を称賛。現在は、中学生の「シニア」のみ9人で活動するチームの廃部危機を脱する活力にもなっている。高校時に通い詰めたハンバーガーショップの店主・大塚幸子さんは、万感の思いで当時を振り返った。

   ◇   ◇   ◇

80歳を迎えた有安氏にとっても、松坂のニュースが生きる力になっている。「松坂世代と言われるプライドもあったんじゃないかな。子どものころから、褒めたり、厳しくしたりしてきたけれど、長い間、やり切る強さを見せてくれた。私も現役監督として、預かった生徒たちを投げ出すわけいかない」。ケガとも闘いながら、現役を長く続けてきた姿に賛辞を贈った。

10年に世界一に輝いた強豪だが、現在は中3と中2が2人ずつ、中1が5人。「シニアは9人では公式戦出場が出来ないんです」。東京五輪のカヌー競技会場に利用されている松坂も練習していたグラウンドは閉鎖中。転々とせざるを得ない環境も要因だ。そんな中でも「パイナップル3個を父母が用意してくれたのですが、みんなが食べないからと言って、松坂が全部ペロッと食べたんですよ。そうしたら腹痛で救急車で運ばれたんです」と松坂伝説も計画性の重要さを学ぶ教材に。「1時間でいいから、顔を見せて実際に話してほしいなあ」とも願った。

当時、将来を見据えて「4イニング限定登板」の育成計画を貫いた大枝氏も「夢と希望をありがとう」と感謝した。中学最後の大会で敗れ、神宮球場の切符売り場近くでのミーティングは今でも忘れられない。「大輔は泣いている仲間に1人だけ背中を見せて体育座りしているんですよ。泣いていたけれど、人前では堂々として見せたかったんですよ」。「1」の背中に、日本、世界のエースとなる未来を予感していたと言う。球界を代表する大きな背中は、2人の恩師にとっても誇りだ。【鎌田直秀】