第207臨時国会が6日召集され、岸田文雄首相は衆参両院で所信表明演説を行った。

新型コロナウイルス「オミクロン株」拡大に対応するため「最悪の事態を想定」とし、危機管理への決意を示した。一方で公約として掲げて来た「成長と分配の好循環」は、演説後半に述べられるなど、優先順位が下がったイメージで、与党席からの拍手もまばらな場面もあって、盛り上がりに欠けた。

岸田首相は「デジタル化で地方から国全体へボトムアップの成長を実現する」とし、20日からマイナンバーカードを利用してスマホ対応のワクチン接種の電子証明書発行をスタートさせると表明した。これに対して立憲民主党の泉健太代表は「分厚い中間層とか、ボトムアップとか、立憲民主党が掲げてきた、訴えてきた言葉が随所にあって野党の役割はこういうところにもあるのかなと、実感した」と皮肉を込めた。そして「論戦しがいのある演説だった」と、衆院代表質問での対決姿勢を明確にした。

身内からも冷ややかな声がもれた。自民党の閣僚経験者の1人は「菅(義偉前首相)さんより、(演説は)上手かもしれないが、経済対策などは具体性がない」と指摘した。

この日、政府は月内成立を目指す21年度の補正予算案を提出した。新型コロナウイルス感染症対策や経済対策などに充てられ、一般会計の歳出総額は補正予算として過去最大の35兆9895億円。18歳以下へ10万円相当給付では現金とクーポンに分けた場合に現金一括に比べ、クーポン配布の事務経費が約900億円増となる点も野党から追及が高まっている。

また国会議員への月額100万円の「文書通信交通滞在費」の扱いも焦点となる。日割り支給や使途内容の公開などの法案で、与野党の足並みがそろわず、今国会では見送られる可能性も出てきた。

きょう7日から会期末の21日まで、超大型の補正予算成立を軸に与野党の年末論戦の攻防が激化する。【大上悟】