安倍晋三元首相の国葬が日本武道館で行われた27日、近くの九段坂公園には一般向けの献花台が設置された。朝から大勢の人が詰めかけ、その数は約2万3000人に上った。開始予定時刻から約30分早まり、献花は午前9時半から始まった。

交通規制のため、東京メトロ半蔵門駅が最寄り駅となった。フォーマルからカジュアルな服装まで、老若男女さまざまな人が花束を持ち、待ち合わせなどをしていた。駅周辺の生花店では午前10時半時点で完売となる店も。海外メディアも会場周辺の様子を報道していた。

献花場の九段坂公園は、半蔵門駅からみて北東に位置するが、列は西に1キロ以上離れたJR四ツ谷駅(新宿区)まで延びた。午前11時45分に最後尾に並ぶと、会場までに約5時間かかり、列の全長は6キロ以上に及んだ。昼ごろの気温は30℃近くまで上昇し、警備にあたっていた警察官が「小まめに水を飲み、熱中症には気を付けて下さい」と声をかけていた。会場近くで行われた手荷物検査では、警備員がかばんの中身を一人ずつ確認。飲み物を持っていた場合は、一口飲むように促し、飲料かどうかをチェックしていた。

2カ所に分かれた献花台には安倍氏の遺影が飾られ、多くの花が手向けられていた。江戸川区に住む60代の男性は「足腰がだいぶ疲れたけど、来て良かったです」と満足そうな表情を浮かべた。千代田区の50代女性は「怒りを爆発させるのではなく、淡々と並んで気持ちを示した、サイレントマジョリティー(静かな多数派)が集まったのではないかと思います」と分析した。埼玉県戸田市から来たという高校1年生の男子生徒は「これまでの感謝と、政治家になるという決意を伝えてきました」と力を込めた。一方で、近くの靖国神社で友人と待ち合わせをしていたという20代男性は「国葬だからといって、こんなに人が集まる理由がわからない」と話した。【沢田直人】