藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が初防衛を目指して挑戦者の広瀬章人八段(35)と1勝1敗で迎えた、将棋の第35期竜王戦7番勝負第3局(静岡県富士宮市「割烹旅館 たちばな」)は29日、後手の藤井が広瀬を下して、対戦成績を2勝1敗とした。

28日午前9時からの2日制で始まった対局は、相掛かりから巧みな指し回しで広瀬が序~中盤リード。これに対して、わずかなスキを突いて反撃した藤井が一気に局面をひっくり返すと、終盤力を発揮して午後5時17分、112手で逆転勝ちした。第4局は11月8、9日、京都府福知山市「福知山城天守閣」で行われる。

状況は確実に不利だった。29日午前9時の再開時、持ち時間各8時間のうち、広瀬は残り約5時間、藤井は約3時間。この差は大きい。勝率を表示するAIの評価値も広瀬66%、藤井33%。「先手4五歩(53手目)が見えてなく、進んでみるとこっちの主張がなくなって失敗してしまった。1日目の封じ手あたりですでに苦しくしてしまった」と振り返る。

対応にてこずり、持ち時間を削られながらも粘って反撃のチャンスをうかがう。午後2時30分すぎ、広瀬の失着を見逃さずに攻めかかっていった。「後手7五飛(92手目)の認識が甘かった」と対戦相手が悔やんだほど。まさに「肉を切らせて骨を断つ」。藤井将棋の真骨頂が発揮され、あっという間の逆転劇だった。

静岡不敗神話は生きていた。昨年7月の棋聖戦第3局(沼津市)ではタイトル初防衛を果たした。今年1月の王将戦第1局(掛川市)では掛川対局6戦全勝の「冬将軍」渡辺明王将(当時)を下し、史上最年少5冠への足がかりを築いた。同9月には王位戦第5局(牧之原市)で王位戦3連覇及びタイトル戦10戦全勝とした。今回、苦しみながらも勝利を手にした。

これで初防衛に向け、白星が先行した。「3局すべて初日で苦しくしてしまっていると思うので、そこが大きな課題。修正できるよう頑張りたいと思います」。早くも第4局を見越していた。

【第35期竜王戦7番勝負・今後の日程】

◆第4局 11月8・9日、京都府福知山市「福知山城天守閣」

◆第5局 11月25・26日、福岡県福津市「宮地獄神社」

◆第6局 12月2・3日、鹿児島県指宿市「指宿白水館」

◆第7局 12月14・15日、山梨県甲府市「常磐ホテル」

※対局は2日制。4勝先勝で打ち切り