W杯カタール大会で16強だった日本代表。国内ではモノマネ集団「#ちょいまねジャパン」の応援が注目されたが、FW前田大然(25)をまねた藤本亮さん(36)は元芸人で現在はタクシー運転手という異色の経歴を持つ。クロアチア戦での前田選手の活躍に刺激を受け、再び芸人としてステージに立つ決意を固めた。

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藤本さんのちょいまねの芸名は「前田大自然」。6日のクロアチア戦は東京タワー横にあるスタジオのパブリックビューイング会場にいた。前半43分、前田が先制ゴールを決めた。

「一生懸命に走り続けた大然選手の努力が『報われた』と思った。自分もみんなに握手をされて、写真を撮られて『ありがとう』って言われた。こんなに注目されたのは初めて」。

藤本さんも小3からサッカーを始めた。楽しかったが勝負へのこだわりが乏しくて、高校までレギュラーになったことのないDFだった。

大卒後、お笑い芸人にあこがれて養成所に入り、15年にコンビを組んだ。自分でネタを作れず、相方にまかせて「いい人」キャラしか演じられなかった。全部が他人まかせ。投資でもうかる話に飛びついて、パチンコに溺れて残ったのは借金400万円。漫才に集中できず、ネタを覚えられず相方に愛想を尽かされて地獄のような日々だった。

どん底の4年前に知人からタクシー運転手を紹介された。コンビは解散し、パチンコもタバコもやめて地道に働いた。台本のない状態でお客さんと会話をして安全に目的地に送り届ける仕事に魅力を見いだした。昨年、借金を完済して今年6月に結婚。そのタイミングで過去の芸人仲間から「#ちょいまねジャパン」入りを打診された。「中途半端な五厘刈りから頭をそり上げてヒゲもはやした。ニセモノだけど日本代表としての誇りを持てました」。前田選手の熱いゴールに刺激され、本格的にお笑い芸人に挑戦しようと決意。タクシー運転手との二刀流ながら、今度はピン芸人を視野に入れている。【寺沢卓】

○…「#ちょいまねジャパン」は活動に1度終止符を打ったが、リーダーで酒井宏樹担当の「さっかー井宏樹」ことクロワッサン。(40)は「年が明けたら野球のWBCです」。プロ野球ヤクルトの塩見泰隆外野手(29)が酒井に似ていることを自認していることもあり「今度は塩見選手になりきります。日本のスポーツを応援し続けます」。サッカーでは最後まで森保監督とエース堂安がみつからないままだったので「栗山監督と二刀流大谷選手を募集しまーす」とアピールした。

◆藤本亮(ふじもと・りょう)1986年(昭61)4月5日、奈良県宇陀市生まれ。08年に大阪体育大卒。15年に漫才コンビ「ベロニカ」を結成したが18年に解散。以後はタクシー運転手をし、今年6月、なおみさん(33)と結婚。好物はカレーライス。血液型A。