将棋の最年少5冠、藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖=20)が羽生善治九段(52)の挑戦を受ける、第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第6局(主催 毎日新聞社・スポーツニッポン新聞社・日本将棋連盟)が11、12の両日、佐賀県上峰町「大幸園」で行われ、88手で後手の藤井が勝ち、4勝2敗でタイトルを初防衛した。

本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(83)が対局を振り返ります。

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私、実は最終第7局までもつれたら「羽生乗り」(羽生九段が有利)とみていました。今局は、第2局か第4局で勝った戦法を採用すると思っていましたが、角換わり早繰り銀は意外でした。そんなに作戦勝ちが見込めない戦法ですから。

ただ、羽生九段は「1度成功した作戦は2度と使わない。相手が研究している」と公言しています。彼の棋風であり、勝負哲学でしょう。私なら何度でも勝った作戦を使いますがね。

対局は、藤井王将が封じ手前に指した後手3三桂(58手目)が勝因です。「攻め合いに応じます」との意思表示でした。次に5段目への跳ね出しから、後手3七歩とたたく手が見込めるのが大きいです。2日目の封じ手再開となった直後の先手3四銀に、後手5二玉と守備陣を整えましたから。3九の地点にある玉がいかにも不安定な羽生九段が粘りに出たのに対し、強気な指し方で攻めきりました。

先週の棋王戦第3局は、1分将棋の秒読みに追われて瞬間的に頭が真っ白になったのか、簡単な詰みを見逃しました。うまく気持ちを切り替え、名人戦初挑戦権を得ましたし、王将初防衛も決めました。これで来週の棋王戦第4局(19日、栃木県日光市)にも意気揚々と臨めるはずです。(加藤一二三・九段)