藤井聡太叡王(竜王・王位・棋王・王将・棋聖=20)が菅井竜也八段(30)の挑戦を受ける、第8期叡王戦5番勝負第1局が11日、東京都千代田区の「江戸総鎮守 神田明神」で行われた。対局は、タイトル戦14戦目にして初めて振り飛車党を迎え撃った先手の藤井が、菅井の三間飛車に落ち着いて対応し、先勝。3連覇に向けて好スタートを切った。第2局は23日、名古屋市「名古屋東急ホテル」で行われる。

本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(83)が対局を振り返ります。

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3筋から戦いを起こし、79手目の先手4五歩で桂得した藤井叡王が指しやすくしました。13手目に先手9五歩とした後、9筋を焦点にしたやりとりも巧みでした。先手9四金(109手目)の強手は、後手9七銀先手8七玉後手9八銀不成先手8八玉で安全と読み切って、踏み込んだのでしょう。先手9九香(123手目)と控えた打ち方も、「手堅い」としか言いようがありません。

名人戦第1局で「桂の使い方」がうまいと評しましたが、今回も使った桂が全部有効でした。特に137手目の先手4六桂は、自陣の6八にある角を生かしながら、1九にある相手の馬を遮断し、後手玉の退路も封鎖しました。お見事です。

菅井八段は先手番となる第2局が鍵でしょう。同じ先手番だった昨年8月のA級順位戦は、ゴキゲン中飛車で快勝しています。これは心強いデータ。その時のイメージも含めて上手に立ち回って1勝1敗にすれば、叡王戦は面白くなると思いますよ。(加藤一二三・九段)