東京都世田谷区内などを走行中の小田急線車内で21年8月、乗客3人を刺して殺害しようとしたとして、殺人未遂や窃盗などの罪に問われた住所不定、無職対馬悠介被告(37)の裁判員裁判の初公判が27日、東京地裁(中尾佳久裁判長)で開かれた。
対馬被告は白のシャツに黒いズボン姿で出廷。裁判長から起訴内容について間違いがあるかを問われ「ないです」と答えて認めた。
検察側の冒頭陳述によると、対馬被告は男性の友人や女性から見下されていると感じ「幸せそうなカップルや『勝ち組』の女性を殺したいと考えるようになった」と指摘。対馬被告が無差別大量殺人の願望を持っていたとし、密室で無防備な電車をその場所に選んだと主張した。
事件の直前には東京・新宿の食品店でベーコンを万引しようとしたが、店員に通報されて失敗していた。帰宅後、店に戻って店員を殺そうと思い立ったが、すでに閉店しており実行には至らなかった。腹いせとして電車内で、女子大学生(当時20)などを襲いけがを負わせたとした。起訴状などによると、対馬被告は包丁を逆手で握り、女子大学生の胸や背中を数回突き刺して約3カ月の重傷を負わせた。そのほか、50代女性に約2週間、30代男性に約1週間のけがを負わせたなどとしている。
弁護側は起訴内容の事実関係は認めたが、殺意については「確実に殺そうとしたものではない」と争う姿勢を示した。その上で「(被害者は)死んでも構わないし、死ななくても構わない程度だった」と述べた。また、気分が高まったり落ち込んだりする双極性障害が、対馬被告の犯行の動機などに影響したと主張した。
東京地検は21年9月から鑑定留置し、責任能力があると判断して、22年1月に起訴した。
今月26日に東京地裁で始まった21年10月に発生した京王線乗客襲撃事件で、「バットマン」シリーズの悪役「ジョーカー」の仮装をして乗客を襲い、殺人未遂などの罪に問われた服部恭太被告(26)の公判では、検察側が小田急線で起きた対馬被告の事件の影響があったと冒頭陳述で指摘した。【沢田直人】

