前人未到の8冠全制覇を成し遂げ、さらなる高みを目指す藤井聡太8冠(21)へ、世界的半導体企業「AMD」(本社米国)の日本法人「日本AMD」が12日、藤井が将棋研究のための自作パソコン(PC)で使用している同社CPU(中央演算処理装置)の最新型が完成次第に提供し、さらなる進化に協力することを明言した。

藤井は人工知能(AI)を使った将棋ソフトで将棋研究を深めている。ソフトの「読み」のスピードを高めるために、極めて高性能なCPUを組み込んだPCを自作しており、処理速度は世界最高水準とされる。日本AMDは22年9月に藤井とCM出演などの広告契約を結んだと発表。販売店などで当時約100万円で取引されていた「Ryzen Threadripper(ライゼン・スレッドリッパー)PRO 5995WX」を提供してきた。

藤井の8冠達成を受け、関路子代表取締役副社長は取材に「サポートさせていただけたのであれば、大変光栄に思っております」と語り、「新製品が出た際にはまたご提供できればと思います」と明言。日々進化するCPUの最先端版でのサポートを約束した。お祝いの記念品を贈ることも検討している。関氏は「今後も将棋界を盛り上げていただけるような活躍をしていただきたい。期待も込めて、おめでとうございますとお伝えしたい」と祝福した。日本AMD公式Xも12日、8冠達成を祝い「AMDはこれからも歴史に名を刻み続ける、藤井さんの挑戦を応援していきます」などとつづった。

藤井はAMDの会長兼最高経営責任者(CEO)であるリサ・スー氏を「世界で最も会いたい人」として挙げ、7月に都内で対談を果たした。通訳を介し、AMDに期待することなどを話していたという。関氏は「藤井さんにご活用いただけるような製品を今後も作っていきたい」と力を込めた。【沢田直人】

◆AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ) 米・シリコンバレーで1969年に設立。最先端の半導体製品の製造から事業をスタート。会長兼最高経営責任者(CEO)はMIT(マサチューセッツ工科大学)で電気工学部で学士号、修士号、博士号を取得し、IBMでも半導体研究開発センター副社長などを務め、2021年には女性技術者の殿堂入りしたリサ・スー氏。本社は米国カリフォルニア州。