福島県沖で釣ったヒラメがおいしいランチ定食になった。

復興庁の手がける復興支援の一環として、福島・富岡漁港(福島第一原発跡から南に約9キロ)から出船した遊漁船で釣った大型ヒラメを食材として、東京・目黒区にある東大の駒場リサーチキャンパス内の食堂コマニでから揚げ定食として販売された。

釣り師として大型魚ハンターとしても知られ、クローザーとしても日米の野球界で活躍した佐々木主浩元投手(日刊スポーツ解説者)が今月5日に福島沖で釣りあげたヒラメ。食堂では「大魔神ヒラメ」と称した特選素材として扱い「甘辛手羽先風」のメニュー名前で提供した。価格は1000円で限定25食。ヒラメの唐揚げが珍しかったこともあって、1時間以内に完売した。

学内の先端科学技術研究センターでがんに関連した分析に取り組む大澤毅博士(46=腫瘍学)は「お刺し身とかはありますがヒラメでこの味は経験ないですね。とてもおいしいです」と話すと、大澤氏と打ち合わせるため上京していた北大の園下将大(そのした・まさひろ)教授(47=がん制御学)も「駒場の食堂がうまいとは聞いていたけど、ヒラメってこんなに肉厚なですね。おいしかった」ととろけそうな笑顔で語っていた。

井の頭線沿線に住む田中恵美子さん(56)は娘・服部成美さん(33)と孫・楓佳(ふうか)ちゃん(5)とランチに訪れた。田中さんは「以前から評判の食堂、初めてきたんです」と話し「実は福島の須賀川市出身。ご縁がある。ふわふわでした」と話すと、成美さんは「実は20年以上前にグアムに移動するベイスターズの選手たちと同じ便で佐々木さんのお姿もチラッと…ありがたいです」とニッコリ。楓佳ちゃんも「白身のお魚大好き。このヒラメもおいかった」とめくばせしてくれた。

食堂では、厳選した素材の風味を優先させた料理法にこだわっている。6月1日、福島沖で釣れたクロソイやメバルなどを使っての試食会も実施しており「素材として申し分のない魚がいる海域」ととらえており、佐々木氏が釣り上げたヒラメということもあって「ぜひ活用したい」。釣った佐々木氏も「釣り場としてはとても魅力深い。私は短時間で10匹、ポンポンポンと釣れた。食べていないけどおいしいヒラメと確信できた」と振り返っている。

食堂の広報担当で大魔神ヒラメを調理した玉田泉さんは「普段なかなか扱わないヒラメ。季節に応じて具材を入れ替えるおむすびに入れてもいいかもしれませんね。お客さんの評判も上々でした」と話した。食材を瞬間冷凍して真空パックできる設備があるため、フレッシュな状態で保管できていた。

次回は同じメニューで11月9日に限定30食で提供する予定。玉田さんは「また佐々木さんに釣っていただけるなら“大魔神”シリーズで定食を考えてみたいです」と語った。

8月24日から福島第一原発の放射性物質トリチウムを薄めた処理水を海洋放出しているが、県や環境省や東京電力などが第一原発の周辺海域での海水迅速分析を実施していて、トリチウム濃度は3・4~9ベクレルで、国の定める検出下限値(1リットル当たり10ベクレル)より下回っている。【寺沢卓】